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投資家注目のソニー吉田憲一郎CFOとのアナリスト向けスモールミーティング。復活の予感とそのシナリオ

投資家に伝えたい3つのポイント

  • 吉田憲一郎CFOはスマホの下方修正を真摯に反省。
  • 90年代の経験からリスク情報はプロアクティブに開示。
  • 現場にはソニーのDNAが残っている。

スマホ事業の下方修正を真摯に反省

7月31日のQ1(2014年4-6月期)決算発表翌日にソニーの吉田CFOを囲むスモールミーティングに参加する機会を得ました。

Q1決算では、スマホの年間販売見通しが5,000万台から4,300万台に、2015年3月期通期の同事業の営業利益予想が260億円からゼロに下方修正されたことがネガティブサプライズでしたが、「なぜ、たった3か月でこれだけの下方修正になるのか?」という問いに対しては、吉田氏からは以下のようなコメントがありました。

“昨年12月にCSO(チーフ・ストラテジック・オフィサー」として、ソネットからソニー本社に着任し、その後CFOにとなったが、当初より、「エレキ事業」のコスト構造に問題点があると感じていた。

持続的な成長のための投資ができる会社にならなければならないと考え、パソコンからの撤退、TV事業の分社化、本社のスリム化に着手したが、かなりの時間をそこに取られていた。このため、言い訳にしかならないが、モバイル事業については、見切れていなかった。予算にも関与しきれなかった。

この会社(ソニー)の問題は非常に細かく見ている事業とそうではない事業との差が大きすぎること。モバイル事業と他の事業の管理に大きな差がある。国ごとのマージンやマーケティングコストなどの情報の共有が十分にできていない。

徹底的に「見える化」することが重要と考えている。経営の規律、アカウンタビリティをそれぞれの事業体に持たせることにした。

Q1の営業利益は698億円と年間予想1,400億円の約半分に達しましたが、吉田CFOは全く業績については楽観視していませんでした。

“オペレーションのリスクがあるため、バッファーを入れている。今期は構造改革をやり切るため、今の緊張感をいかに持続させるかが課題と考えている。

過去の経緯からリスク情報はプロアクティブに開示

モバイル事業については、中期計画の見直しに着手し、見直しの結果次第では、営業権を含む様々な資産に対する減損につながる可能性が示唆されています。Q1末時点での営業権は1,759億円です。なぜ、このタイミングで減損を示唆したのかという点について吉田CFOは以下のように説明しています。

“下方修正を重く受け止めている。スマホは成長分野と見ており、戦意を失ったということではない。

ただし、買収時に想定したキャッシュフローと過去2年の実績、今期予想を見ると、この時点で「営業権」見直さないこともリスクだと考えている。

ソニーは、1994年に映画事業の暖簾代をライトオフした時、そうしたリスクを事前に公表していなかったため、株主からクラスアクションを起こされ、SECからの指導も受けた経緯がある。こうした体験に基づいて、リスクがあることを認識した時点でプロアクティブに情報開示することを徹底している。 

スマホ事業について強調されたことは、赤字事業だから減損するのではなく、スマホ事業のリスクをマネジし、この事業をcash drain (現金流出)事業にしないことが重要とされました。特に、長期間にわたり徐々に業界が変化したテレビ事業とは異なり、スマホ事業の勢力の移行は極めて短期間に起こっているため、スピード感が重要であるという認識が示されました。

現場の若手にはソニーのDNAが残っている

スマホ以外では、ソニーは、6月に米ナスダックに上場した小型カメラのベンチャー企業「ゴープロ」のようなイノベーティブな製品を生み出せるのかという質問があり、これに対しての吉田氏のコメントはとても興味深いものでした。

“ソニーは、新規事業創出するため、部署を超えてオープンイノベーションを起こす取り組みを開始しており、商品企画に活かしてきたと考えている。

デジタルプロダクトについてサービスと使用シーンを一体で考えて製品開発を進めなくてはいけないと考えている。

ソニーの現場には若手を中心に新しい取り組みを行いたいという人がまだ沢山おり、既に約180件の新規ビジネスのアイデアがでている。

シニアマネジメントでも過去の成功体験に凝り固まった人ばかりではなく、経験を活かし若手をサポートートしたいと考えている人もいる。

既存の組織にとらわれないネットワーキングを拡大していきたいと考えている。これは「文化を変える」取り組みなので容易ではないがチャレンジしていきたいと考えている。

ただし、この成果を2~3年で期待するのは時期尚早。まずは、旧来のエレキ事業をリーズナブルな収益構造に戻し、その後、トランスフォーメーションを起こしたいと考えている。

現場にはまだソニーのDNAが残っていることが読み取れるコメントでした。以下のコメントも、ソニーの将来を考えるうえでのヒントになるものでした。

“イノベーション、ユニークネスに拘ることをどこかで置き忘れたことが、ソニーの歯車が狂った理由と考えている。

エレキを何故続けているのかという問いに対しては、「創業者精神」に戻って考えたほうががよいと考えている。

現在、ソニーは、創業世代が始めた金融、エンタメ、画像センサーなどで存続できている。

創業者もAV機器だけに拘っていたわけではない。

最近、ソニーは不動産事業も始めましたが、イノベーション、ユニークネスに拘ったビジネスモデルであれば、創業者達がそうしたように、積極的に取り組んでいくという考えを現在のソニーのマネジメントも持っていると、と理解すれば、不動産業への進出も納得ができる動きとなります。

AV機器に拘らないということは、エレキの全面否定ではありませんが、差別化できない事業はとことん排除していくといことなので、その過程で更に、減損、リストラを迫られる可能性もありそうです。このため、まだまだ、業績は底を打ったと判断するのは時期尚早ですが、本質的なトランスフォーメーションの時期が近づいているという予感はします。

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