目標株価
- 3年以内の目標株価:10,530円、株価上昇余地+36%(8月20日終値7,730円比)。
- 向こう3年以内の目標株価は10,530円です。これは2016年3月期の利益予想に対してPERで19倍にあたります。
- 積極的に投資を推奨したい株価水準: 6,500円以下
投資家に伝えたい3つのポイント
- 東日本旅客鉄道(以下、JR東)は最も人口が多い東京を中心に運営されており、景気に左右されにくい在来線利用者が多く、鉄道会社の中でも安定的な鉄道収入が見込めます。
- 東京、品川、新宿など大規模な集客のあるターミナル駅を多数保有し、その周辺での小売業の展開や不動産開発も積極的に行っており、まだまだこの領域での成長が見込めます。
- 3年以内に10,530円、株価上昇余地+36%(8月20日終値7,730円比)を狙えると考えます。市場要因で株価が6,500円以下になった場合は積極的に買いだと考えます。6,500円は2014年3月期利益予想でPER13倍。PER13倍はリーマンショック後の安値水準と同等です。
業績結果の概要
2013年4月‐6月期の業績結果は、売上高は前年比1.4%増の6,543億円、営業利益は前年比2.5%増の1,291億円、当期利益は前年比24.7%の737億円でした。全体として、景気回復の好影響とJR東固有の新規案件による成長が複合的に寄与した結果、非常に堅調に推移していることが確認できました。
セグメント別の動向
売上及び営業利益増加に貢献したセグメントは、運輸業、その他事業、ショッピング・オフィス事業でした。運輸業は、景気回復の影響、東北地方の震災復興需要、東京駅改装効果などが複合的に貢献したと見られ、定期外収入を中心に増加し、売上が前年比1.4%、営業利益が同0.6%伸びました。また、その他事業では東京ステーションホテルの開業効果がフルに貢献し、また景気回復の影響で広告収入も回復したことで、売上が前年比5.5%、営業利益が同79.7%伸びました。ショッピング・オフィス事業も、JR南新宿ビルの開業や丸の内のJPタワー内のキッテグランシェの開業効果がフルに寄与した結果、売上が前年比6.1%、営業利益が同4.7%伸びました。
決算の時期、短期的に株価に影響を与えるものとは?
決算などのイベントにおいて短期的な株価の動きに影響を与えるファクターとして、「市場の期待値と実績値の乖離」があります。いくら売上や利益が伸びていても、その成長がすでに市場に織り込まれている場合、株価は反応しません。期待値がかなり高くなっている場合には、前年比で伸びていてもむしろネガティブに反応されることもあります。そのため、決算が出ると多くの機関投資家は業績が期待値に対してどうだったかということに注目します。その業績の期待値として市場で見られているものの一つに、企業が期初に開示する「業績予想」があります。
会社の業績予想に対する進捗率
今回の業績結果を会社の予想と比較してみましょう。会社は半期、通期で予想を出しています。半期の予想に対する進捗率を見てみると、売上高では49%、営業利益では50%の進捗率となっており、ビジネスの季節性(夏休みのある7-9月期である第2四半期の方が第1四半期よりやや高くなる傾向がある)を考慮すると、おそらく会社の想定以上の進捗率だったのではないかと推察されます。
月次動向
毎月発表されている鉄道の月次の収入動向においても、足元の堅調さが確認できました。図表1にあるように、2013年に入ってからもずっと堅調に推移していますが、7月の数字も鉄道の月次営業収入は堅調です。定期収入では‐0.4%と若干弱含んでいますが、定期外収入では景気回復の影響が引き続き奏功し+1.7%、全体でも+1.1%で推移しています。
目標株価とバリュエーション
向こう3年以内の目標株価は10,530円です。これは2016年3月期の利益予想に対してPERで19倍にあたります。当社のバリュエーションは国内景気上昇局面ではPERで評価するのが妥当と考えます。現在の予想PERは14-15倍ですが、構造改革効果で景気が良くなった2004年~2007年の当社の平均PERが19倍でした。今後アベノミクス効果で内需が刺激され、国内景気が良くなっていく中で、そのときと同程度まで市場の期待値が高まると予想します。
マクロと固有のリスク
国内のマクロ景気回復が腰折れして景気が急激に悪化する場合、鉄道事業(特に新幹線)、非鉄道事業ともに利益が悪化する可能性があります。また、キャッシュの還元を株主ではなく賃上げという形で従業員に、もしくは安全投資の増加という形で利用者に還元する場合、市場の増配期待を裏切る可能性があります。