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水素社会到来の鐘-恩恵銘柄を考える。どの企業に注目すべきか

投資家に伝えたい3つのポイント

  • トヨタが発売した燃料電池車(以下、FCV)「MIRAI」に代表される究極のエコカーへの期待が高まってきた。現実的な価格面を含めて、FCV普及への大きな一歩として注目されよう。
  • FCVの燃料である水素の調達源は、潜在的に膨大な量に及ぶ可能性があり、メガソーラーなどの再生エネルギーを利用することで新たな供給ソースを確立することが期待される。日本の成長戦略にも貢献が期待される。
  • FCV関連産業の裾野は広いため、様々な企業が関わってくると思われるが、当面は、水素運搬、水素ステーション普及、炭素繊維等に関係する企業に注目したい。

当レポートの関連銘柄

  • 「MIRAI」関連:部材を供給したのは、トヨタ紡織(3116)、東レ(3402)、豊田自動織機(6201)、デンソー(6902)、愛知製鋼(5482)など、東レを除くとトヨタ系企業が多い。この中では、東レの炭素繊維は燃料タンク軽量化、電池スタック用カーボンペーパーなど重要な供給者になると思われる。
  • 水素製造関連:JXホールディングス(5020)、岩谷産業(8088)、三菱化工機(6331)
  • 水素運搬:川崎重工(7012)
  • 水素貯蔵:川崎重工(7012)、千代田化工建設(6366)、中国工業(5974)
  • 水素ステーション関連:JXホールディングス(5020)、岩谷産業(8088)、豊田通商(8015)、大陽日酸(4091)、日東工器(6151)、加地テック(6391)
  • 水素部材関連:東レ(3402)、宇部興産(4208)、太平洋工業(7250)、トヨタ紡織(3116)

水素社会は燃料電池車(FCV)の登場でスタート切る

昨年末のトヨタによる「MIRAI」の発表に引き続き、ホンダも2015年度中に国内での発売を目指すことを発表した。今後は、日産や海外大手自動車メーカー(ドイツ、韓国など)が追随してくる可能性が大きいと言われている。「MIRAI」に関する情報は既に多く喧伝されており、ここでは詳しく述べないが、かつて一台1億円以上と言われた販売価格を今回約723万円に設定し、政府補助金制度を活用すると500万円台前半の価格でのスタートとなった。

水素スタンドの建設コストと補助金

FCVは、一回の水素充填(約3分)で500~700Km走行可能で、走行時に排出するのは水だけである。トヨタでは近い将来、HV車並みの価格を目論んでいるようだ。FCV普及への最大の問題は、燃料である水素の供給インフラである。全国に約3万4千か所あるガソリンスタンドを漸次、水素スタンドを併設するために改築する必要性が出てくる。水素スタンドの建設費は約5億円、半分は国の補助金が使えるが、それでも通常のガソリンスタンドよりも高くなる。東京都では更に一件当たり1.8億円の補助金を拠出するため、東京都内であれば建設費1億円以下で水素スタンドの建設が可能となった。液体水素で100%シェアを持つ岩谷産業(8088)、JXホールディングス(5020)、東京ガス(9531)などが、当面の2015年度末をメドに首都圏、関西圏に水素スタンドを多数建設する計画を着々と進めているようだ。FCVが普及するまでには、ハイブリッド車の普及歴を見るまでもなく、相当な期間が必要と思われる。

水素の市場規模はどれくらいか

ただ、潜在的に無尽蔵な水素の確保、及び、爆発しやすい危険性を伴うという欠点をクリアすれば、究極のクリーンエネルギーであること、世界に先駆けて開発した水素エネルギー関連技術であること、当産業の持つ裾野の広さ、などから考えると、日本が優位性を発揮できる有望な分野の1つと言えるかもしれない。日本エネルギー経済研究所の予測によれば、FCV関連市場(燃料電池車、燃料電池、水素供給インフラ等)の国内市場は、2030年に1兆円、2050年に8兆円と拡大するようだ。あくまで予測に過ぎないが、将来的には、2013年のソーラー市場2.5兆円を超える大きな市場になる可能性を秘めていると思われる。

水素とガソリン価格の比較-どちらが安いのか

2014年末に公表されたFCV燃料用の水素価格(ガソリン価格に相当)は、JX日鉱日石エネルギーが1,000円/Kg、岩谷産業が1,100円/同であった。この価格設定は、基本的には、ガソリン車並みの価格設定である。「MIRAI」は5Kgの満タンで約700Kmの走行が可能であるが、ガソリン車がリッター当り15Km(=約130円)とすると、1Km走行のコストはほぼ7~9円となるため、FCVと同じレベルになる。今後、水素の販売量が増えると、更に安くしても黒字が確保できるというのが供給者の読みだと思われる。

水素の潜在的供給能力

では、燃料としての水素はそんなにたくさん確保できるのだろうか?現時点での水素源は主に、苛性ソーダ工場での副生水素、製鉄所でのコークス生産から副生されるCOGガスに含まれる水素、石油精製設備から生産される水素、等が主な供給源となっている。ここにある試算がある。石油エネルギー技術センター(JPEC)は、日本の水素供給余力は2020年で年間54億立方メートル、2030年で61億立方メートルと予測している。仮にFCVが500万台普及する場合、必要とされる水素の量は年間50億立方メートルと見られている。実際、水素は主にマーガリン、口紅などに使用されているが、大半は空気中に放出されている。これを使わない手はないと考えられる。

未来の水素の調達手段とその可能性

将来、メガソーラーの電力で水を電気分解したり、安い褐炭をガス化して水素を大量生産したり、あるいは都市ガス、LPGの水蒸気による改質(リフォーミング)は既にエネファームで実用化されており、炭素と水素の化合物、いわゆる炭化水素(有機物)であれば何でも原料として使用可能だ。中東など炭化水素源が安価な地域で水素を製造し、それを常温常圧でタンカー輸送すれば、使い勝手の良い燃料になる可能性は高いと考える。JXホールディングスの木村会長が「輸送や貯蔵ができる電気としてエネルギー社会の基本構造を変える可能性がある」(2015年1月1日の日経新聞記事)と表現している。大量の電気を貯蔵する技術と考えれば、既存の電池を超えるものという位置付けも可能になろう。

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