アナリスト
推奨来高値 +10%
29人の方が、この記事を参考になったと投票しています。

アンリツ(6754)の持続的成長のカギはパートナー戦略(2015年12月11日推奨終了)

目標株価

  • 1年間以内の目標株価:1,600円、株価上昇余地27%(9月3日終値1,256円対比)。
  • 積極的に買い・買い増し推奨したい株価水準:1,300円以下。

投資家に伝えたい3つのポイント

  • モバイル用計測器は持続的な成長が期待できます。
  • Q1決算はサポート費用の増加を主因に減益となりましたが過度な懸念は不要です。
  • ITバブル後の苦しい体験から持続的な成長を目指す企業文化が形成されています。

アンリツのモバイル計測器市場はブルーオーシャンです

投資を行う時に重要なことは、投資対象企業の主力市場がレッドオーシャン(血みどろな戦いが避けられない市場)かブルーオーシャン(競合が相手が少ない市場)かの見極めです。経営者や技術がたとえ極めて優れていてもレッドオーシャン市場では利益を持続的に伸ばすことが困難であるためです。

現在のアンリツの収益源であるモバイル計測器市場は、グローバルでブルーオーシャン市場です。開発用の市場はアンリツとローシュワルツの2社でほぼ市場を二分しています。また、製造用でも、ローデ・アンド・シュワルツ(ドイツの非上場企業)に加え、アジレント・テクノロジ(NYSE上場)が競合企業ですが、アンリツは約30%のシェアを確保しています。

モバイル用計測器は、スマートフォンの開発及び製造の現場で使われます。主な顧客は、三星電子、アップル、シャープ、富士通、京セラなどの通信機器メーカー、クアルコム、インテルなどのチップセットメーカー、フォックスコンなどのEMS企業、ドコモ、ソフトバンクなどの通信キャリアなどです。顧客企業は血みどろな戦いをしており、特に日本の通信機器メーカーは競争激化で苦戦を強いられていますが、モバイル計測器市場はブルーオーシャンであるため高い採算性を確保できています(2013年3月期の計測機事業の営業利益率は21%)。

ブルーオーシャンは3Gスマホから

モバイル計測器事業がグローバルで高いシェアを確保できるようになったのは、3G規格ののスマートフォン普及が加速化した2010年頃からです。

アンリツはモバイル用計測器を90年代から事業化していましたが、海外展開には時間がかかりました。理由は、日本のデジタルモバイル通信規格(PDC方式)がグローバル化せず、欧州発のGSMが日本以外の海外市場で主流となっていたためです。国内ではNTTドコモと規格の開発段階からパートナーとして組み、いち早く計測器を市場投入できても、海外では、GSMに強いアジレントの牙城を崩すことができませんでした。

転機となったのは、モバイルインターネットの普及、つまり、3Gスマホの台頭です。3Gは、2000年代前半から先進国を中心に普及が進みましたが、当時は、まだ、音声が主流であり3Gは、グローバルローミングのための「おまけ」のようなものでした。このため、海外の通信機器メーカーは、2Gの延長線で3Gを捉え、計測器も、2Gで実績があるアジレント製を採用し続けました。GSMでの実績が少なかったアンリツは、3Gで優れた計測器を開発しても、海外企業からはあまり相手にはされませんでした。

ところが、3Gスマホの時代になると、通信機器メーカーは、将来の4G(LTE)を見据えて計測器を選択するようになりました。スマホでは、データ伝送量の早さが重視されるためです。アンリツは、NTTドコモと4Gの開発を進めていたため、3Gと4Gの両方に対応できるテスターを競合企業より早く投入することができました。また、GSMから3G、4Gを全て計測できるワンボックステスターと呼ばれる製品を開発し、アジレントからの置き換えに取り組んだ結果、2000年代後半から海外でシェア拡大に成功しました。

顧客とパートナーになることが参入障壁に

アンリツの中期成長を考えるために、もう一度、グローバル化に10年以上の歳月を要したかを以下に補足します。

1990年代にモバイル通信は、アナログからデジタルに移行し、当初2G(GSMやPDCなど)でスタートした通信規格は、その後、データ伝送スピードの高速化に伴い、2.5G(GPRS)、3G(W=CDMA、CDMA2000など)、4G(LTE)へと進化して来ました。

こうした通信規格は、政府関係者、通信事業者、携帯電話機メーカーなどの専門家による標準化委員会で制度化されますが、計測器メーカーは、規格が正式に決定される以前から計測器を開発する必要があります。

このためには、計測器ユーザーとは守秘義務を結び、単なるサプライヤー対顧客の関係ではなく、顧客のパートナーとして認められ、お互いの技術ロードマップを開示しながら、開発を進めていくことが求められます。このような関係にならなければ、地域ごと、キャリアごとの細かな対応や刻々とバージョンアップされる規格への対応ができないためです。

パートナーとなるまで関係を深めることは、一朝一夕にはできませんが、一度、築く事ができれば、これは大きな参入障壁となります。このため、10年以上かけて築き上げた現在のブルーオーシャンの状態は簡単には崩れないと見ることができます。

Q1の減益が決算であることの正しい理解が必要

2014年4-6月期(Q1)の減益決算は、上記のような顧客とのパートナー戦略が重要であることを理解した上で見る必要があります。

Q1の売上高は前年比4%増収でしたが、営業利益は同38%減となりました。大幅減益となった最大の要因は、海外顧客に対するサポート費用の増加による販売管理費の増加でした。Q1の販売管理費は70.2億円と前年比で13億円増加し、対売上比率も前年同期の26.3%から31.4%に上昇しました。

ここにきて、海外顧客に対するサポートを積極化した理由は、NEC、パナソニック、シャープなどの国内の通信機メーカーがスマホからの撤退や事業縮小が加速していることや、グーグル、アマゾン、マイクロソフトなどの非伝統的な顧客の存在感が高まってきたためです。こうした顧客に対してもサポートを強化しパートナーの関係を構築することで、中期的な成長を確実にすることを狙った結果が、Q1の減益の背景だったため、減益決算を過度に悲観的に捉える必要はないと考えられます。

モバイル用計測器はまだ伸びる

NECなどの国内メーカーだけを見ているとスマホ市場は非常に厳しい市場ですが、グローバルな観点では成長市場です。新興国での本格普及はこれからであり、また、スマホのなかで4G(LTE)は、今年でも25%程度に留まるため、計測器の需要は先進国でも新興国でもまだ伸びる余地が大きいと見てよいでしょう。

広尾から厚木へ(なぜ高成長ではなく持続的な成長を目指すのか?)

企業文化という観点からも同社の中期見通しを考えたいと思います。同社の経営戦略は中期計画には、”持続的成長”という言葉が多く見られ、短期的な高成長は追い求めないという姿勢が読み取れます。

こうした考え方に至ったのは、2000年のITバブルでの利益急拡大と、その後の業績の大幅な悪化で味わった苦しい体験によります。当時の業績牽引役は光伝送装置用の計測器でした。インターネットの普及でネットワークの帯域不足が起こり、これに対処するために光ネットワークの増強が必要とされ計測機の需要も急拡大しました。しかし、好調は長続きしませんでした。2001年3月期に過去最高営業利益(231億円)を計上しましたが、2年後には107億円の営業損失、328億円の最終赤字となり経営危機に陥りました。この結果、都心の一等地の広尾にあった自社ビルを売却し、厚木に移転)せざるを得なくなりました。

ここでの苦い経験から、短期的な高成長を追わない、顧客を分散する、利益率を高めることが事業を継続するために重要といった考えがマネージメントに浸透していきました。

スマホ市場の拡大で業績が好調でも、そこで慢心せず、短期業績が減益となってもパートナー企業を増やし、顧客の分散化に注力しているのも、こうした経験があったことによります。

なお、現在、モバイル用計測器の顧客は約200社ですが、上位顧客の三星電子、クアルコム、NTTドコモでも、それぞれ構成比は5%以下でとなっています。

アンリツの収益構造

収益構造として押さえるべきポイントは計測器が収益源となっており(2013年3月期の営業利益構成比95%)、計測器のなかではモバイル用の採算性が最も高いということです。

2013年3月期の計測機の売上内訳は、モバイル用(3G、LTE)が50%、ネットワークインフラ用(光伝送装置用計測機、基地局用テスタなど)が30%、エレクトロニクス(電子部品用汎用計測機など)が20%でした。

ネットワークインフラでは、米JDSユニフェイス傘下のアクテルナ社が高いシェアを確保しており、アンリツは劣勢です。また、エレクトロニクスでは、アジレントが汎用オシロスコープで築き上げた市場ポジションにアンリツは食い込み切れていません。このため、ブルーオーシャンの状態にあるモバイル用が計測器の稼ぎ頭になっています。

機関投資家が必ず見ているポイント

機関投資家が注目しているポイントは、短期業績の推移と、海外でのLTEの普及動向です。

短期業績に関しては、Q1の営業利益率が11%と通期会社計画の17%と比べかなり低調であったため、どのタイミングで利益率が上向くかが注目されています。

ちなみに、私はQ2以降も販管費の絶対額が減少する可能性が小さいことや、海外顧客との関係強化の効果が現れるのは下期からと見られるため、2Qも営業利益率は13%程度と低位に留まる可能性が高いと見ています。ただし、Q3からは、現在、販売活動を強化している海外顧客向けに採算性が高い開発用テスターが増加するため、営業利益率は20%程度まで改善すると予想しています。

海外でのLTEの普及動向については、中国版LTE(TDD=LTE)や、次世代LTE(LTE-Advanced)の動向に機関投資家は注目しています。

中国では、LTE端末もローカル企業が高いシェアを確保すると見られますが、アンリツはローカル企業も顧客としているため、LTEの普及が進むことはポジティブに捉えられます。

次世代LTEは、既に韓国のSKテレコムが現行LTEの2倍の伝送スピードの次世代版サービスをスタートしていますが、それ以外でも世界で11ヶ国16事業社がサービスの導入を2015年頃に計画しています。今後、更にオペレーターの数が増えれば、開発用テスターの収益寄与が高まるため、こうしたニュースフローにも注意が必要です。

なお、アップルの新型iPhoneに関しては、関連する電子部品メーカーに比べると、同社に対しての機関投資家の期待はそれほど大きくはありません。理由は、アップル向けには開発用だけを供給しており、量産用は販売していないためです。ただし、三星電子に対しては開発用と量産用を供給しているため、アップルの新製品が、三星電子の端末販売に与える影響については、機関投資家は注視しています。

配当を考える

今年度の配当は、会社計画の達成を前提に、年間配当を前年比据え置きの20円とすると発表しています。2013年3月末のネットキャッシュは183億円(2013年3月期の年間配当総額の約8倍)とキャッシュは潤沢ですが、配当の目安は、DOE(Dividend on Equity)で4-5%であるため、来年度以降も急激に増加するのではなく、安定的に推移すると見られます。

目標株価とバリュエーション

向こう1年間の目標株価は1,600円とします。9月3日終値(1,256円)対比で、27%の上昇余地となります。目標株価のPERは、私の2014年3月期の予想ベースで19倍となり、市場平均に対して約3ポイントのプレミアムとなります。プレミアムの根拠は、同社の今期予想ROEは18%と2013年3月期の東証一部平均の5%を大きく上回っていることや、主力事業の計測機事業の採算性の高さを考慮したことによります。

固有のリスク

日本の携帯電話メーカーの減速は、海外メーカーの拡大でカバーできるという見方が私のメインシナリオですが、海外事業の拡大ペース以上に国内事業が落ち込む可能性が短期的なリスクとなります。

中長期的には、モバイル通信の技術革新のペースのスローダウンし、新製品の開発サイクルが長期化することがリスク要因として挙げられます。

業績ハイライト

この記事は参考になりましたか?

はい いいえ

29人の方が、「この記事が参考になった」と投票しています。

無料ニュースレターに登録

メール送信

初回登録で推奨銘柄レポートを1本お届け!
> 読者登録規約を登録前にお読みください。

新規ユーザ登録

PR

関連記事一覧

PR

重要事項(ディスクレーマー)

1. 本記事で提供される投資情報等および調査・分析記事は、株式会社ナビゲータープラットフォーム(以下、「当社」)または執筆業務委託先が、記事購読者への情報提供を目的としてのみ作成したものであり、証券その他の金融商品の売買その他の取引の勧誘を目的としたものではありません。

2. 本記事で提供される投資情報等ならびに調査・分析記事は、当社または執筆業務委託先が信頼に足ると判断した情報源に基づき作成しますが、完全性、正確性、または適時性等を保証するものではありません。

3. 本記事で提供される見解や予測は、記事発表時点における当社または執筆業務委託先の判断であり、予告なしに変更されることがあります。

4. 当社は、記事における誤字脱字等、記事の大意、結論に影響が無いと当社が判断する修正に関しては、記事購読者に特段の通知をすることなく、行うことがあります。

5. 本記事で提供される如何なる投資情報等および調査・分析記事に、またはそれらの正確性、完全性もしくは適時性等に、記事購読者が依拠した結果として被る可能性のある直接的、間接的、付随的もしくは特別な損害またはその他の損害について、当社および当社に記事を提供する執筆業務委託先は責任を負うものではありません。

6. 本記事に掲載される株式等の有価証券および金融商品は、企業の活動内容、経済政策や世界情勢など様々な影響により、その価値を増大または減少することもあり、また、価値を失う場合もあります。投資をする場合における当該投資に関する最終決定は、必ず記事購読者ご自身の判断と責任で行ってください。

7. 当社および執筆業務委託先は、記事の内容に関する記事購読者からのご質問への対応など、個別相対性のある追加サービスは行いません。但し、記事内容につき不適切な内容があり、当該内容について確認、修正、削除依頼をいただく場合はこの限りではありません。

8. 本記事に掲載されている内容の著作権は、原則として当社または執筆業務委託先に帰属します。記事購読者は、本記事で提供される情報に関して、当社の承諾を得ずに、当該情報の複製、販売、表示、配布、公表、修正、頒布または営利目的での利用を行う権利を有しません。

9. 本重要事項(ディスクレーマー)は随時アップデートされることがあります。最新の内容をご確認ください。

当社および執筆者による表明

1. 当社の取締役及び、発表前の記事に触れる可能性のある当社職員は日本株(個別銘柄)の取引を自粛いたします。但し、当社入社前から保有している株式の売却や相続等、相当の理由がある場合は本人からの事前申請に基づき取引を許可することがあります。また、執筆業務委託先についても、執筆者は特定の日本株(個別銘柄)を売買した場合(新規ポジションをつくった場合に限ります)はその後3ヶ月間、当該銘柄に記事上で言及することができず、また、記事上で言及した銘柄についてはその後6ヶ月間売買を制限されます。

2. 本記事の執筆者は、本記事で表明されている見解が調査対象会社やその証券に対する執筆者個人の見解を正確に反映していることをここに表明します。また、当該執筆者は、これまでに本記事で特定の見解を表明することに対して、直接的または間接的に報酬を一切受領していないこと、また、今後も受領する予定もないことをここに表明いたします。