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ファクトリーオートメーション部品の世界標準へ。ミスミグループ本社の戦略とは

株式会社ミスミグループ本社 代表取締役社長 CEO 大野龍隆 × Longine IR部

株式会社ミスミグループ本社(証券コード:9962。以下、ミスミ)代表取締役社長CEO大野龍隆氏に、アジアのものづくりの変化、FA事業の海外戦略、株主還元方針についてお伺いしました。

Longine IR部から投資家に伝えたい3つのポイント

  • ものづくりのグローバル化が進むなか、ミスミは選ばれるグローバルサプライヤーになる。
  • 高品質・低コスト・確実短納期を変種変量で実現できるノウハウが強み。
  • 売上高の成長を優先し中長期の成長投資を積極的に実施する。

良好な事業環境だった2014年度

Longine IR部(以下、Longine):2014年6月にCEOに就任されて1年が経ちます。事業環境を振り返ると、2014年度はどのような1年だったのでしょうか。

株式会社ミスミグループ本社 代表取締役社長 CEO 大野龍隆(以下、大野):継続的な成長に向けて積極的な施策を展開してまいりましたが、市況にも恵まれた良い1年でした。自動車業界とスマートフォン関連といったエレクトロニクス業界からの受注が活況であったことに加え、ミスミの新たな流通事業としてのVONA事業の拡大も牽引し、前期比で売上高が+20%増、当期純利益が+22%増になりました。

Longine:どのような取り組みをされたのでしょうか。

大野:ミスミは、ものづくりの要素を含むメーカー事業と、他社商品なども販売する流通事業を併せ持つ世界でも類を見ないユニークなビジネスモデルが特長です。事業セグメントで申し上げますと、メーカー事業はFA事業と金型部品事業に、流通事業はVONA事業に該当します。今回はその中でメーカー事業、特にFA事業についてのお話が中心になるかと思いますが、ミスミはこの2つの事業とそれを支える事業基盤の革新により業績を拡大してきたことを最初に申し上げておきたいと思います。

メーカー事業に関しては、設計コストを削減したいという顧客の潜在ニーズに応えるため、ウェブカタログやウェブ受注システムを国内外の拠点に導入することによって、ウェブ戦略を推進し競争力を強化しました。また、海外における拠点展開として、最適調達を目的とした現地生産・現地調達の取り組みを推進し、高品質・低価格・確実短納期を着実にグローバル展開したことが評価されたと考えます。この結果、主力のFA事業(ファクトリーオートメーションなどの生産設備に使用される部品など)は+20%増収し、連結海外売上高も+25%増加しました。

Longine:足元の市場環境は、順風満帆とは言いがたい状況になりつつあります。

大野:確かに足元では、中国経済の減速懸念や自動車・スマートフォン関連需要の停滞といった不透明感が高まっていると言えます。しかし一方では、中国・アジアでのものづくりは着実に変化し進化しています。ミスミがその流れを捉えてきちんと対応することで、継続的な成長に向けた機会はさらに増えていくでしょう。

株式会社ミスミグループ本社 代表取締役社長CEO大野龍隆

進化するアジアのものづくり

Longine:中国・アジアのものづくりは、具体的にどのように進化してきているのでしょうか。

大野:中国・アジアはこれまで、比較的安価な労働力を大量投入することによって世界の工場たりえてきたわけですが、近年人件費を始めとするコストの大幅な増加と労働力の不足によって大きな影響を受けるようになってきました。それらを大きく改善させ生産性を上げるものとして、FA化が大きく期待されています。

Longine:追い風になりますね。

大野:そうですね。FA化で生産性を上げるためには、部品の精度と品質が大変重要です。これはミスミが長年こだわってきた領域ですから、ぜひこのトレンドを追い風にしたいですね。しかし、ものづくりの現場にはさらにダイナミックな変化が起きているとみています。

Longine:具体的にはどのような変化でしょうか。

大野:ものづくりがグローバル化し、設計や製造の現場を含めたサプライチェーン全体が1つの国に収まることなく国境を超えることが当たり前になってきました。車やスマートフォンなどがその代表例です。製造がグローバルに複数地域で行われ、しかもそれらの立ち上げが同時に行われるという事例も珍しくありません。日本だけではなく、米国や韓国といった様々な国でこうした動きが加速しています。

Longine:部材サプライヤーの供給体制もこれに対応しなければなりませんね。

大野:そうですね。特に2008年のリーマンショック以降で顕著になってきている動きとしては、目まぐるしく変わる市場の需要動向に柔軟に対応するために、製造にかかるリードタイムを短縮したり、在庫を最小化したりといった取り組みがあげられます。

Longine:それはすなわち、ミスミは小ロットで高品質・低価格・確実短納期を実現しさえすればそれで十分に対応できるということでしょうか。

大野:昨今の市場環境に鑑みると、必ずしもそれだけでは十分だとは言えません。EMS(電子機器の受託生産を行うサービス)の世界大手との取引では、通常小ロットを確実短納期でお届けするミスミにとって、相対的に大ロットを短期間に納入することを要求される場合もあります。小ロットから比較的大きなロットまで、市場の需要動向に柔軟に対応するためにミスミに求められる領域は広がりつつあります。

「変種変量」を実現するミスミの商機は拡大する

Longine:2014年度の好業績の背景には、こうしたダイナミックな変化にミスミが適切に対応していることがあるのですね。

大野:ミスミが海外展開に本腰を入れて13年になります。「日本品質」を低価格・確実短納期で世界に届けるために、2005年までは純粋な商社であったミスミが、製造機能のグループ内への取り込みを行うといった取り組みを通じて実績を積んできたことが、お客様に評価されています。さらに、リーマンショック以前から不断にサプライチェーンの短縮に取り組み、「変種変量」の生産体制を磨きこんできました。ものづくりのグローバル化が進むほど、ミスミのようなグローバルサプライヤーの果たす役割は大きくなり、その立場はより強固になっていくと確信しています。

Longine:「変種変量」は一朝一夕でできるものではなさそうですね。

大野:調達、加工、発送といったサプライチェーン全体においてノウハウが必要です。いわば企業秘密のかたまりと言えるでしょう。2015年4月からは、さらに一歩踏み込み、国内における受注製作品の標準納期を3日から2日に短縮することができる体制になりました。これは、ミスミの10年をかけたプロセス革新の集大成とも呼べるものです。

中国南通工場は順調に立ち上がる

Longine:2014年3月に本格稼働した南通工場の立ち上げは順調でしょうか。

大野:南通工場は、ミスミグループ最大規模のFA向け大規模一貫生産工場という位置づけです。おかげさまで、立ち上げはほぼ予定通りに進捗しており、EMS等のエレクトロニクス需要の刈り取りといった取り組みにも貢献しています。

Longine:工場設立の背景について、さらに詳しく教えてください。

大野:FA化の成功のカギは生産設備の品質と精度です。しかしながら、日本から高品質の部品を輸出して届けたとしても、輸出にかかるプロセスに時間を要し、なかなか日本と同様の競争優位性を発揮することができませんでした。それを、中国に新たな大規模工場を建設することで改善することを目指しました。これから中国で高品質品への需要が飛躍期に入る時期こそミスミにとっては一大商機と捉え、これを逃さず投資することに決めました。

Longine:南通工場が効果をあげていくためのポイントは何でしょうか。

大野:日本品質を、中国市場コストで、確実短納期で届けることがカギです。日本で蓄積したミスミ生産方式のノウハウを適切に移植し、工程管理や労務管理に工夫をこらすことで最大限に効果を発揮しています。他社に簡単に模倣できるとは考えにくいです。

Longine:南通工場では、主にどういう顧客と取引しているのでしょうか。

大野:エレクトロニクス関連のEMS、自動車関連、医療機器関連などです。ミスミがもともと得意とする顧客層をきっちり開拓しながら、新たな需要の掘り起こしにも注力しています。その結果、工場の操業度を適正に維持・向上できています。

Longine:そうした顧客層のミスミグループ全体の中での位置づけについて教えてください。

大野:中国国内のFA化需要は旺盛で、事業規模・顧客層ともに拡大が予想されます。そういった意味で今後もこれらの顧客層の重要性はますます高まっていくことが予想されることから、その旺盛な需要にはしっかり応えていく方針です。

ベトナム工場を拡張へ

Longine:中国における能力増強に加えてベトナム工場の第4工場建設が決まりました。今なぜベトナム工場を拡張するのでしょうか。

大野:FA部品のアジアや欧米向けの能力強化が目的です。FA部品の受注製作品を、高品質・低コスト・確実短納期で納める予定です。

Longine:中国以外のアジアでもFA化ニーズが旺盛なのですね。

大野:その通りです。中国南通工場が主に中国国内を担当し、ベトナム第4工場は欧米・アジア向けの輸出需要に対応します。グループのノウハウと、従前からのベトナム工場の熟練工の活用で、スムーズな立ち上げを目指しています。これにより、日本・中国・ベトナムにおける3極生産補完体制の構築を目指しています。

FA事業の日本・中国・ベトナム3極生産補完体制の狙い

Longine:FA事業における3極生産補完体制にはどんなメリットがあるのでしょうか。

大野:まずは、グローバルサプライヤーとして必要なカントリーリスクの分散です。次に、各国の休日を踏まえた通年生産体制の確保です。そして、通常小ロットに対応することが多いミスミにとって比較的大きな受注への柔軟な対応といった、対応力強化という狙いもあります。

Longine:変種変量のうち、一時期に大量の発注を受けた場合のことですね。

大野:グローバルなものづくりが進むほど、確実短納期・大量納入の力も試されます。これこそが、ミスミの実力を発揮する場と捉えて、3極生産補完体制を最大限に活用したいですね。

FA事業の中長期成長をめざして

Longine:世界の工場である中国・アジアでのFA化の進展や製造のグローバル化といったトレンドに、ミスミは適切に対応しているようですね。では、さらに高い成長を目指すためにどういう構想をお持ちでしょうか。

大野:地域面でいえば、欧米でも製造業回帰の流れが見えつつあり、そこでも事業機会の拡大の可能性があります。今のところこれらのエリアにおいてミスミの認知度やシェアは高くないのですが、エリアごとの属性や可能性を見極めながら成長機会を探っています。

Longine:製品面では、どのような試みをされているのでしょうか。

大野:現在ミスミは部品単品を納入する事業のウエイトが高いのですが、ユニット化・モジュール化を推進することで新たな価値を生み出し、顧客の利便性とミスミの収益性をともに改善することが可能か、さまざまな試みを行っています。必要な場合には他社と共同開発をしています。

Longine:欧米や中国では、インターネットを活用した製造業の強化に関するさまざまな構想が示されています。

大野:そうですね。それには、インダストリー4.0といった構想も含まれると思いますが、これはグローバルなサプライチェーンを管理し最適化するという思想であり、サプライチェーン全体をネットワーク化する必要があります。ミスミには、生産上の諸情報が揃う仕組みが構築されています。従って、ミスミのような多品種をグローバルに供給できるサプライヤーこそ、顧客に選ばれ活躍の場が広がるはずです。

Longine:では当面どんな課題があるのでしょうか。

大野:Eコマース基盤をますます磨き上げることだと思います。世界的規模のコンシューマー向けEコマース事業者が、製造業の領域に参入するような可能性も十分に考えられます。ミスミとしては、これまで築いてきた高品質・低価格・確実短納期というビジネスモデルをグローバルで着実に展開し、変種変量で顧客の支持を集め続けることが最大の優位性になりますから、今後もその強化に努めていきます。

Longine:新しい試みも必要になるのでしょうか。

大野:現在、顧客とのインターフェースは紙カタログとウェブの両方がありますが、そのバランスをよりウェブへとシフトしていかなければなりません。それにより、顧客の発注データの分析・活用にますます力を入れていく必要があるでしょう。顧客の発注の予測精度を上げると、ミスミのビジネスの幅が広がるかもしれません。

Longine:ミスミブランド以外の生産間接資材全般を取り扱うVONA事業も重要ですね。

大野:そうですね。VONA事業についてはまた別の機会に詳細のご説明をさせていただきたいのですが、この事業は強力なITシステムで顧客の利便性を向上させ、既存の流通モデルを変革させていくことを掲げていますから、Eコマース基盤の強化が一層重要です。

日本や海外の生産間接材のサプライヤーに対しては、グローバル販売の幅広いアクセスを提供し、顧客である大企業や中小企業に対しては、生産間接材分野で最大の品揃えを活用した一括購入を可能にしています。Eコマース基盤の強化により、顧客ベースを拡大させ、非効率・高コストの多段階流通プロセスを独自のモデルで変革し、事業規模の拡大を図っています。

株主・投資家へのメッセージ

Longine:まだまだ成長投資が必要なのでしょうか。

大野:はい。ミスミは日本で蓄積したビジネスモデルを海外に移植し、FA部品で世界から選ばれるグローバルサプライヤーに変貌を遂げています。しかし、今後も継続的に成長を遂げていくためには、引き続き顧客の新しいニーズに対応していくことが必要です。さらに、先ほどお話した通り、グローバル競争に立ち向かうためにはEコマース基盤の強化もまだまだ必要です。

Longine:株主、投資家の方にメッセージをお願いします。

大野:ミスミはまだまだ成長機会にあふれていると考えていますので、成長を通じた企業価値の最大化こそ最善の株主還元だと思います。引き続き売上高の成長にこだわっていきたいと考えています。

Longine:配当についての考え方を教えてください。

大野:当面は現在の配当性向である25%を維持し、将来に向けた成長投資のための内部留保とのバランスを考慮していきたいと考えます。

出所:SPEEDA、会社資料をもとにLongine IR部作成


Longine:ROEは2桁を超えていますね(2015年3月期11.5%)。

大野:成長を続けながら、継続して収益性にこだわってきたことが2桁のROEを維持できている要因だと思います。今後も成長とROE水準の維持を両立するよう舵取りをしたいと考えます。

Longine:リーマンショックの時にも赤字にならなかった安定性もポイントですね。

大野:その通りです。FA関連ということである程度はマクロ的な投資サイクルに連動することは避けられませんが、消耗品である部品を扱っていることや成長機会を柔軟に探していることから比較的ダウンサイクルにも強い体質になっています。機関投資家・個人投資家を問わずミスミ株主に長期保有の方が多いのは、こうした特徴を理解していただいているからではないでしょうか。

Longine:本日は貴重なお話をありがとうございました。

大野:こちらこそ、ありがとうございました。

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