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  • Mon Nov 23 23:00:00 UTC 2015
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デバイス・電池を持つ強みを活かしたビジネスモデルに変革-パナソニックAIS社成長戦略

パナソニック株式会社 オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社 伊藤好生社長 × Longine IR部

パナソニック株式会社(証券コード6752。以下、パナソニック)代表取締役専務 オートモーティブ&インダストリアルシステムズ(以下、AIS)社 伊藤好生社長にAIS社の2018年度にかけての成長戦略について、車載事業やファクトリーオートメーション(FA)事業、蓄電池事業などを中心として、今後の展開についてお伺いしました。

Longine IR部から投資家に伝えたい3つのポイント

  • パナソニックのデバイス事業は、転地先として自動車(オートモーティブ)と産業(インダストリアル)領域に決めた。
  • パナソニックの車載事業は、「快適」、「安全」、「環境」という3つのテーマを掲げている。
  • パナソニックの産業向け事業は、ハードウェアだけで販売するだけではなく、ソリューションに視点を移した事業を展開したいと考えている。

2018年度に向けてAIS社の成長戦略-初めに転地ありき

Longine IR部(以下、Longine):パナソニックといえば、白物家電やテレビやオーディオなどの黒物家電を中心に取り扱う家電メーカーという印象があります。パナソニックの中でのAIS社の位置づけ・役割を教えてください。

パナソニック株式会社 オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社 伊藤好生社長(以下、伊藤):パナソニックのデジタル商品はある程度の世界シェアを持ち、これまでグローバルに事業を展開してきました。社内のデバイス事業部は社内の完成品を扱う事業部と足並みを揃えて事業を行っていれば、先端テクノロジーを駆使したデバイス開発と生産を行うことができました。しかし、最近は様相も変わり、当社のデバイス事業は指針を失うとともに収益性が落ちることになりました。そうした中、パナソニックの津賀一宏社長の方針もあり、デバイス事業もこれまで以上に社外の成長分野にかじを切ることを決めました。それが自動車(オートモーティブ)や産業(インダストリアル)領域であり、そこに転地をすることを決めたのです。

パナソニック株式会社 オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社 伊藤好生社長

パナソニックの車載事業の3つの重点領域

Longine:転地を積極的に進めているということですが、パナソニックの車載事業は既存の自動車部品メーカーと比較してどのような立ち位置なのでしょうか。また、パナソニックの車載事業にはどのような強みがあるのでしょうか。

伊藤:当社の車載事業は、「快適」、「安全」、「環境」という3つのテーマを掲げています。一言で言えば、「快適」はカーナビやディスプレイといったインフォテインメント、「安全」はADAS(先端運転支援システム)、「環境」は自動車向け二次電池を取り扱っています。

Longine:長期的に見ると3領域ではどの領域の成長が一番大きいのでしょうか。

伊藤:中長期で見れば、安全領域の需要が最も大きくなると見ています。これは私の独自の見方ですが、自動車におけるIoT(モノのインターネット)の究極の姿は自動運転であり、そうした状況ではADASを基盤とした安全領域が一番大きくなっていると思います。

出所:会社資料

Longine:パナソニックのADASでの強みはどういった点にあるのでしょうか。

伊藤:当社はこれまでデジタル家電をやってきたこともあり、たとえば、各種センシングデバイスや画像処理技術、その高速処理や多重割込処理などの技術を活かせることが分かってきました。こうした技術を活用してADASでドライバーに「安全」を提供することができる領域で事業を広げていきたいと考えています。また、画像処理技術に加え、セキュリティ技術を活用することで事業展開できる余地が大きいことを感じています。ただ、将来は3領域がきれいに切り分けられるわけでもないと思います。HUD(ヘッドアップディスプレイ)のようにディプレイという意味では快適領域かもしれませんが、少ない視線移動により安全の水準を向上させるというアプリケーションでもあります。したがって、今後は快適や安全が重なり合う状況というケースもたくさん出てくると思います。

次世代自動車のカギとなる3つの要素

Longine:これまでのADASのお話のように自動車の姿も自動運転に向かって大きく変化していくことになると思います。その中でどのような点が自動車にとっては重要になるのでしょうか。

伊藤:私が重要だと思っている構成要素は3つあると考えています。1つは、自動車の目や耳に当たる「センシング」。2つ目は、自動車の頭脳とも言うべき「ECU(電子制御ユニット)」。3つ目は、センサー群で収集した情報を処理したデータをもとに、その結果を表示するインターフェースであったり、ブレーキやステアリング操作といった「アウトプット」です。

Longine:そうした要素において事業を拡大していくためにはどのような工夫が必要なのでしょうか。

伊藤:自動車が将来ネットワークへつながる状況を「コネクテッド」と呼んでいますが、そうした環境下で独立した部品をたくさん並べても、自動車をネットワークにうまくつなげることはできません。規格なりプラットフォームに準拠し、部品を企画・開発・設計・製造しないと最終形にはなりません。システム全体を俯瞰して理解しないと、システムに何らかの変更を加えた際にどのような影響が起こるか予想できなくなります。私たちはそうした状況を想定しながら事業に取り組んでいます。

Longine:先ほど将来の自動車を考える上で、重要な要素は「センシング」、「ECU」、「アウトプット」ということでしたが、パナソニックが今後最も注力すべきカテゴリーをあえてあげていただくとどのカテゴリーでしょうか。

伊藤:アウトプットです。自動車に関してはアウトプットを理解しなければ、ECUにおける提案もできません。さらに言えば、1つの機能にしても垂直統合のビジネスモデルにしておかなければ、性能にせよ品質にせよ自分たちで責任を持つことができません。

車載事業における外部リソースの取り込み方

Longine:今後の車載事業の取り組みに関しては、長期的には垂直統合型のビジネスモデルである必要があるとのことでしたが、そうした事業領域を自社で次々と新たに展開していくのでしょうか。それとも不足する領域を外部からM&Aなどを通じて取り込んでいくのでしょうか。

伊藤:自動車という人命のかかった装置を開発する上では、長い歴史の知見やノウハウが必要となります。自分たちですべてをまかなえるとは決して思っていませんので、アライアンスや協業だけではなく、M&Aは避けては通ることができないと思っています。

Longine:スペインの自動車向けミラーメーカーのフィコサにも出資をされました。その背景を教えてください。

伊藤:先ほど自動車を作るための知見やノウハウが重要という話をしましたが、それらに加えて自動車産業では規制も重要です。将来電子ミラーの装着義務化が行われたりすれば、当社の画像処理技術とフィコサ社のミラーでの実績が活きることになります。特にミラーは保安部品ですから、簡単に参入することは難しい事業です。また、フィコサ社の売上高のほとんどは欧州メーカー向けです。一方で、当社の売上高は日系メーカー比率が高く、両社で地域的に重複がない点もシナジーがうまく働くと考えています。

技術変化が産業構造を変えるという思想の原体験とは

Longine:ところで、伊藤社長は自動車の変化に対して積極的に技術変化とそれに伴う新しいアプリケーションをアレルギーなく受け入れているような印象がありますが、それはなぜでしょうか。

伊藤:これは私のパナソニックでの経歴と切り離して語ることができません。当社に入社して以降、技術変化により産業構造が劇的に変わる場面を何度も経験してきました。アナログからデジタルという切り口で言えば、たとえば、レコードプレーヤーが最終的にはCDになりました。ブラウン管テレビが薄型テレビになり、カメラはデジカメに替わりました。最近では、蛍光灯もLEDに切り替わりつつありますよね。

Longine:これまでの経験の中でも最もドラスティックだった内容について教えてください。

伊藤:最も印象深いのはコンピューターです。以前私はコンピューター事業に携わっていました。DOS/V時代には、当社でIBM向けODMを担当する部門にいました。しかし、マイクロソフトのWindowsが登場し、産業構造が一変しました。当社事業部も大きな影響を受けました。こうした経験から自動車も将来アーキテクチャーが変われば、産業構造が変化する可能性は十分にあり、そこに当社の事業機会をより多く見出せればと思います。

ファクトリー・オートメーション(FA)からFをとる発想

Longine:これまでは車載事業を中心に話を伺ってきましたが、ここからは車載以外で今後成長が期待できる事業について教えてください。どのような事業が成長していくと見ているのでしょうか。

伊藤:産業領域で期待できるのは、FAと蓄電池事業だと思います。

Longine:それでは、まずFA事業についてお伺いいたします。パナソニックではどのような商品を取り扱っているのでしょうか。

伊藤:FAでは、実装機などを中心に取り扱っています。当社が得意なのは基本的には生産工程での省力化であったり、自動化プロセスです。リンクロボットであれば、どれくらいの力で物を取り、何らかの判断をして、運んだ物をどのタイミングでどのように降ろすかという作業を行います。ここにも当社のセンサー技術が活かされます。デバイスを持っていることが強みになるのです。

Longine:今後、FA事業はどのように展開していくのでしょうか。

伊藤:これまでは、実装機のような生産工程で活用できるロボットをコントローラーと一緒に販売することをしてきました。しかし、これからはそうしたハードウェアだけで販売するだけではなく、省力化もしくは省人化に貢献するソリューションに視点を移した事業を展開したいと思っています。

Longine:いま、ロボットというキーワードが出ましたが、パナソニックのロボットは生産現場に投入することが中心になるのでしょうか。

伊藤:まず、初めに断っておきたいのが、当社のロボットは一般の方が真っ先に思い浮かべるような二足歩行のロボットではありません。当社のロボットは、生産現場での省力化や自動化に使用され、今後もその需要はあると思います。しかし、私は現時点でもう少し広い概念でロボットをとらえたいと考えています。FAのFであるファクトリーの概念をはずしたらどうかと社内で様々な検討をしています。たとえば、日本では今後2030年から40年にかけて15から65歳の労働人口が減少していくことは見えてきているわけです。そうした中で、様々な場面で人手不足が起きる可能性が高くなります。現時点ではロボットは生産現場で活躍していますが、サービス業も1つの重要なフィールドになると思います。

需要家のニーズに合わせた蓄電池事業の展開

Longine:パナソニックの蓄電池事業はどのような事業展開を考えているのでしょうか。

伊藤:蓄電池に関しては様々な引き合いがあるのですが、まず規模が大きな内容で言えば、発電所向けの蓄電池です。このケースでは、発電所でパワーグリッドをすでにお持ちなので、当社としては蓄電池を納めるだけとなります。これは既存事業の延長線上にある事業です。しかし、このビジネスモデルだけでは事業規模を拡張するにあたっては十分と言えません。今後は蓄電池事業を当社の柱にするためには、エネルギーマネジメントのモジュールやユニットを合わせ、当社の電池特性が最大限活かせるシステムとしてビジネスモデルを確立しなければなりません。

Longine:パナソニックの電池特性を活かした用途とはどういったものでしょうか。

伊藤:まず当社の蓄電池がリチウムイオン電池であることを考えれば、蓄電池に対してコンパクトさやスペース効率を求める需要家を探る必要があります。リチウムイオン電池はエネルギー密度が高いため、商業施設やビルなどの限られたスペースに設置することが可能です。一方で、蓄電池を設置するのに広大なスペースをお持ちの方に当社の蓄電池は魅力的には映らないと思います。

Longine:蓄電池も顧客の使い方で需要が大きく変わるのですね。

伊藤:蓄電池事業において、お客様に対して何でもやりますというのは、何もできないことになります。お客様ごとに蓄電池に対する特性が全く異なるからです。電池容量を求められるお客様もいれば、充放電特性やサイクル回数、温度特性といった点を重視されるケースもあります。このように求められる特性が異なれば電池のレシピが変わってきます。したがって、当社の得意とする電池特性のお客様での占有率を上げていくのがメインシナリオとなります。

Longine:最近は蓄電池事業ではどのようなアプリケーション向けの引き合いが強いのでしょうか。

伊藤:特徴的な動きとしては、1つは携帯電話基地局向けバックアップ電源です。現在は鉛電池であるのをリチウムイオン電池で置き換えつつあります。もう1つはデータセンター向けバックアップ電源です。世界中のプレーヤーがクラウド事業を展開していますが、その企業が巨大なサーバー群を運用しています。停電になりデータを消失するリスクを減らそうと急速放電のバックアップ電源としてのニーズがあります。また、太陽光や風力発電といった再生可能エネルギーに関連した蓄電池のニーズも海外で特に多いといえます。

AIS社の目指すビジネスモデルへのプロセス

Longine:AIS社が目指すビジネスモデルで理想的なモデルはどのような内容なのでしょうか。

伊藤:ハードウェアの売り切りモデルではなく、メンテナンスなどのサービス収入が売上高のうち数十パーセントもあれば事業としては非常に経営しやすくなります。好不況に関わらず、収益の見通しの確度は断然よくなります。

Longine:サービス収入を得られるビジネスモデルに転換していくためにはどのようなことが必要なのでしょうか。

伊藤:お客様によってもいろいろですが、当社製品のサービスだけを求めていることはまずありません。お客様はできるなら丸投げをしたいのです。仮にそうした需要を当社で受けることができるのであれば、それは1つのビジネスチャンスと言えます。そうした新たな機会は社内でも新しい組み合わせに挑戦すればできることもあるでしょうし、他社とうまく組むことで実現可能かもしれません。お客様との接点を常にたくさん持つことで新しいビジネスモデルが見えてくると考えています。

Longine:本日は長時間ありがとうございました。

伊藤:こちらこそありがとうございました。

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