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世界に羽ばたく民間航空機産業での注目ポイントを考える【Longine投資テーマ50】

投資家に伝えたい3つのポイント

  • 世界の民間航空機の需要は、旅客数の伸びに支えられ中長期的にも安定成長が見込まれる。
  • 世界の航空機市場はボーイングとエアバスに寡占化されているが、日本企業のサプライヤーとしてのプレゼンスは上昇傾向にある。
  • 完成機ビジネス(MRJ、ホンダジェット)の収益貢献は相当先になる模様だが、ニュースフローの増加により、株式市場における民間航空機ビジネスへの注目度は今後も高まっていくことが予想される。

当レポートの関連銘柄

  • 三菱重工業(7011):MRJを製造、開発。ボーイング向け主翼、後胴などを製造。
  • 川崎重工業(7012):ボーイング向け前胴などを製造。
  • 富士重工業(7270):ボーイング向け中央翼などを製造。
  • 新明和工業(7224):ボーイング向け翼胴フェアリング、エアバス向け主翼フィレットフェアリングなどを製造。
  • IHI(7013):国内航空機エンジン製造トップ。GE製エンジン部材などを製造。
  • 東レ(3402):炭素繊維を製造。
  • 帝人(3401):炭素繊維を製造。
  • ブリヂストン(5108):飛行機用タイヤを製造。
  • ナブテスコ(6268):ボーイング向けフライトコントロールアクチュエーターを製造。
  • 住友精密工業(6355):飛行機用の降着装置を製造。
  • 日機装(6376):逆噴射用カスケードを製造。
  • ジャムコ(7408):飛行機用化粧室、厨房を製造。
  • 島津製作所(7701):空調システム、操縦系統システム、ヘッドアップディスプレイを製造。
  • パナソニック(6752):航空機用エンターテイメントシステム(アビオニクス)を製造。

なぜ株式市場で航空機産業が注目されるのか

航空機産業が株式市場で注目される理由として、以下の3点が考えられる。

第1の理由は、中長期的に安定成長が見込まれるためである。日本本航空機開発協会によると、世界の民間航空機の今後20年間(2015年~2034年)までの新規納入機数は32,688機(新規需要53%、代替需要47%)が見込まれている。既存機4,459機を加えた2034年時点での合計運行基数は37,147機となり、2014年実績の19,877機と比較すると、ほぼ2倍に拡大することが見込まれている。

こうした強気な需要予測の背景には、世界の航空旅客数送量が2014年から年率+4.7%で成長し、2034年には2.5倍(2014年比)に拡大すると見込まれていることがある。1994年~2014年までは年率+4.9%で成長し2.6倍に拡大していたこと、世界人口の増加が不可逆的であること、などを考慮すると、この予想は決して楽観的ではないと考えられる。実際に、ボーイング社、エアバス社ともに、現在は大量の受注残を抱えている。

第2の理由は、航空機産業の中で日本企業のプレゼンスが高まっているためである。航空機産業の大きな特色は、1機あたりの部品点数が、数十万点から数百万点に及ぶため、機体メーカーの下に基幹部品メーカー(Tier1)、下請け(Tier2、Tier3)に階層化されている産業構造を形成していることだ。世界の民間航空機市場は、米ボーイングと欧州エアバスによる寡占状態にあるため、大半の日本企業は下請け企業にならざるを得ないことが多かったと考えられる。しかし、この下請け構造の中で、日本メーカーは着実にプレゼンスを高めている

例えば、ボーイング向けの場合、従来の主力「767」型機における日本企業の製造割合は16%であったのに対し、最新の「787」型機ではこの比率が35%に高まっている。また、2月12日付け日本経済新聞よると「三菱重工業と川崎重工業、富士重工業の3社が、米ボーイングに次世代小型旅客機の共同開発を提案した」と報じられており、今後は単なる下請けからリスク・レベニュー・シェアリング・パートナーとしての存在感が高まると考えられる。

このため、かつての主力産業であった電機業界が凋落する中で、航空機産業は、自動車に続く日本を代表する製造業として注目度を高めると考える。長期的な成長余地という観点で見れば、自動車産業よりも大きな期待が持てるのではないだろうか。

第3の理由は、部品製造だけではなく、完成機ビジネスも本格的な拡大期に入ってきたためである。日本の航空機産業は1945年の終戦以降、機体生産のみならず、部品生産から研究・実験までが1952年の朝鮮戦争まで禁じられていた。このため、戦前まで世界最高水準にあった多くの航空機関連メーカーが撤退に追い込まれた。その後、1980年代頃からボーイングとの共同開発で技術力を高めてきた日本メーカーは、ついに完成機ビジネスにおいて、再び世界に向けて羽ばたく時期に差し掛かっていると言えよう。

最近の具体例では、ホンダは2015年末に小型ビジネスジェット機「ホンダジェット」の初号機を米国で納入しており、米国工場で年間80~100機を量産する計画である。また、三菱重工は、MRJの組立工場での量産準備を今秋から計画しており、2017年から量産を開始し、2019年から本格的な量産体制に入ることを目指している。

ビジネスとして完成機事業が成功に至るまでには、今後も様々な紆余曲折が予想される。しかし、関連のニュースフローが増加することは間違いないと見られ、株式市場での注目度は、今後も一段と高まっていくと考えられる。

アナリストが注目する航空機産業のポイント

前述の通り、世界の民間航空機産業の長期需要は右肩上がりの成長が期待でき、日本企業のプレゼンスも高まっている。また、短期的に見ても、原油価格の下落等によりエアライン各社の業績改善が目覚ましく、新型機導入への投資余力が高まっていることも、航空機産業にとっては大きなサポート要因である。

また、航空機の主要部位は、機体構造(エンジン以外の胴体部分)、エンジン、装備品(脚部品、飛行制御装置、タイヤ、化粧室、AVシステムなど)、素材(チタン鍛造品、アルミ鍛造品、炭素繊維)に分かれるが、いずれにおいても、安全性を確保するために高い品質を求められることに注目すべきである。

安全性確保のための品質重視であるため、極端な価格競争に陥り難いこと、既に納入実績を持つ企業は新規参入企業に置き換えられるリスクが非常に限定的であることなども、この業界に係わる企業にとっては大きな魅力であり、アドバンテージである。常に部品サプライヤーが入れ替わる民生エレクトロニクスやIT業界とは大きく異なるため、個人投資家は、需要動向をじっくりと見定めながら長期投資を検討することが可能である。

ちなみに関連銘柄としては、機体構造では三菱重工業(7011)、川崎重工業(7012)など、エンジンではIHI(7013)、素材では東レ(3402)などが挙げられる。

航空機産業の銘柄選別のポイント

航空機産業の開発・製造から納入までの期間は、一般的には約10年と長く(自動車は約3~4年)、投資回収期間は更に時間を要する。

例えば、ビッグスリーと呼ばれる米ゼネラル・エレクトリック(GE)、米プラット&ホイットニー(P&W)、英ロールス・ロイス(RR)とリスク・シェアリング・パートナー契約を結びエンジン部品を供給しているIHIの場合、利益率が最も高い稼ぎ頭は15年以上前に納入されたエンジン部品のアフターサービス事業である。また、MRJでも事業が単年度黒字化するのは2021年頃、累積キャッシュフローが黒字化するのは2020年代後半の見込みである。

このため、銘柄選別にあったては、事業を長期にわたって継続できるだけの財務体質を確保できているか、製品ポートフォリオにおいて初期投資段階の事業と投資回収期にある事業とがバランスが取れているか、などを見極めることが重要であろう。

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