17人の方が、この記事を参考になったと投票しています。

第2ステージに入る我が国の再生医療、有望市場とその関連企業を探る【Longine投資テーマ50】

投資家に伝えたい3つのポイント

  • 2014年の医薬品医療機器法の法律制定により、加速された再生医療に熱い視線が注がれている。京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥教授は、再生医療は第2ステージに入ると見ているようだ。
  • 再生医療は2030年に国内市場1兆円、世界市場5.2兆円の有望市場だが、当面は細胞治療より創薬支援分野が先行するだろう。
  • 細胞の大量培養に関わる培地・培養装置などの周辺機器、材料関連メーカーが注目されよう。また、創薬支援分野では京都大学iPS細胞研究所との共同成果が期待できる製薬メーカーに注目したい。この分野では、武田薬品工業、大日本住友製薬が先行している。

当レポートの関連銘柄

  • 武田薬品工業(4502):製薬大手。京都大学iPS細胞研究所と共同研究契約を締結。
  • 大日本住友製薬(4506):製薬大手。理化学研究所、ヘリオス、京都大学iPS細胞研究所、日立などと幅広く連携。
  • 明治ホールディングス(2269):理化学研究所と共同で再生医療技術による毛髪再生に関する提携。
  • 富士フィルムホールディングス(4901):2014年10月にJ-TEC(ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング)を連結子会社化。2015年3月に米Cellular Dynamics International(CDI)社を買収。
  • テルモ(4543):大阪大学澤芳樹教授と開発した心臓病治療用の心筋シートの製造販売の認可を2015年に取得。
  • ニプロ(8086):ES細胞、iPS細胞など多能性幹細胞を大量に培養できるプラスチック製培養バッグを京都大学と共同開発。
  • アイロムグループ(2372):遺伝子の運び手である世界的なベクター技術の子会社に持ち、iPS細胞作製キットの量産工場が2016年稼働予定。
  • ヘリオス(4593):加齢黄斑変性治療で理化学研究所、大日本住友製薬と共同歩調。他人のiPS細胞を使って治療用細胞を量産へ。
  • ニッピ(7932):大阪大学と共同で幹細胞が増殖するのに必要な培地(足場材)を開発。京都大学iPS細胞研究所とも提携。
  • 味の素(2802):京都大学iPS細胞研究所と、細胞培養に培地で提携。
  • カネカ(4118):京都大学iPS細胞研究所と、細胞の自動培養装置開発で提携。
  • 藤森工業(7917):再生医療に関する細胞培養が可能な使い捨てタイプのプラスチックバッグ「バイファス」を開発。
  • 日産化学工業(4021):京都大学などと共同で開発したES/iPS細胞の新たな培養法である「スフェア培養法」による3次元化技術に注目。
  • リプロセル(4978):培養液など、iPS細胞の研究試薬や創薬支援などを手掛ける。
  • セーレン(3569): 幹細胞を傷めずiPS細胞の凍結保存するための特殊液体を開発。

なぜ株式市場で再生医療が注目されるのか

第1の理由:2012年の山中伸弥氏のノーベル生理学賞受賞によって、iPS細胞を使った再生医療に対する関心が一段と高まったことは記憶に新しい。その後、2014年11月に「医薬品医療機器法」(旧薬事法)と、「再生医療安全性確保法」の2つの法律が成立し、再生医療の早期実用化に向けた下地ができ上がった。また、同年9月に加齢黄斑変性という目の難病患者に対して、iPS細胞から作成された上皮細胞を世界で初めて移植する手術が理化学研究所(以下、理研)の高橋政代プロジェクトリーダーによって実施されている。こうした状況を見ると、日本の再生医療技術は、世界をリードする存在になりつつあると考えられる。

第2の理由:従来の医療技術では治療の難しかった“難病”と言われる病気の治療に、再生医療技術の応用が期待されているからである。心臓移植を待つ重症心不全、パーキンソン病、難病の筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー型認知症、脊髄損傷などの根本治療に希望が持てるようになったのだ。また、細胞の大量培養技術の進歩により、インシュリンを分泌する膵臓、解毒作用を持つ肝臓などの臓器作成も夢ではなくなりつつある。

第3の理由:再生医療技術に関して、具体的に企業が動き出したことだ。2015年春に武田薬品工業と京都大学iPS細胞研究所との間で10年間の共同研究開発契約が行われ、また、富士フィルムホールディングスがiPS細胞製造で先行する米国CDI社を買収した。さらにアイロムグループ(旧アイロムホールディングス)、ヘリオスといった上場バイオベンチャー企業が独自の技術で存在感を示している。こうした企業の動きは加速する一方である。

アナリストが注目する再生医療のポイントは

視点1:経済産業省の再生医療関連市場予測(装置、関連資材、サービスなど周辺産業)によれば、2012年で170億円の国内市場が2020年に950億円、2030年に1兆円になり、同じ2030年の世界市場は5.2兆円になるという、非常に高いポテンシャルを持った市場が見込まれている。

視点2:京都大学iPS細胞研究所の山中教授によると、「iPS細胞舞台は研究所から病院へ移行する第2ステージに入る」(日経新聞、2016年3月24日)と述べている。このことは既に部位別、用途別のiPS細胞の作製に自信を深め、これからは患者への臨床研究のステージに入ることを意味する。糖尿病、神経細胞、ガン免疫療法、肝臓、パーキンソン病などへの臨床応用は、早ければ2017年から2020年までに開始されそうだ。

視点3:創薬支援。今年、武田薬品工業がiPS細胞研究所と10年間、総額320億円の共同研究契約を締結したのは、高いポテンシャルを持つとされる創薬分野での応用に狙いがあると言われる。製薬企業は膨大な化合物ライブラリー(リスト)を持つが、その中でクスリとして有効な物質を見つけ出す効率性は極端に低い。仮に人の臓器細胞を、再生技術を使って作製できれば、使われていないライブラリーの中から有効な薬が再発見される可能性が高まる。加えて、心臓、肝臓などへの毒性試験もこの万能細胞によって行えば、毒性・安全性試験の効率性がコスト面を含めて飛躍的に高まる。

実際に、欧米の大手製薬メーカーは既にES細胞、iPS細胞を使ってこうした新薬の発見、安全性テストを行っている。富士フィルムホールディングスが今年買収した米国のCDI社(セルラー・ダイナミクス・インターナショナル)はiPS細胞を大量培養して製薬メーカーに供給する世界的企業だ。また、ニコンが提携したスイスのロンザ社もそうした細胞を供給する創薬支援企業である。以上から今後10年間の再生医療市場の大きな流れは、製薬メーカーによる創薬支援(新薬探索)、細胞の大量培養に関連する材料、バイオリアクターなど装置の市場拡大が期待できると考えられよう。

恩恵を受ける企業群は

以上を踏まえ、再生医療に関連するテーマは再生医療の開発、創薬の効率化、再生医療工程の効率化などの分野に広がっている。当面は、武田薬品工業、大日本住友製薬、明治ホールディングス、富士フィルムホールディングス、テルモ、ニプロ、アイロムグループ、ヘリオスなどに注目しておきたい。

この記事は参考になりましたか?

はい いいえ

17人の方が、「この記事が参考になった」と投票しています。

無料ニュースレターに登録

メール送信

初回登録で推奨銘柄レポートを1本お届け!
> 読者登録規約を登録前にお読みください。

新規ユーザ登録

PR

関連記事一覧

PR

重要事項(ディスクレーマー)

1. 本記事で提供される投資情報等および調査・分析記事は、株式会社ナビゲータープラットフォーム(以下、「当社」)または執筆業務委託先が、記事購読者への情報提供を目的としてのみ作成したものであり、証券その他の金融商品の売買その他の取引の勧誘を目的としたものではありません。

2. 本記事で提供される投資情報等ならびに調査・分析記事は、当社または執筆業務委託先が信頼に足ると判断した情報源に基づき作成しますが、完全性、正確性、または適時性等を保証するものではありません。

3. 本記事で提供される見解や予測は、記事発表時点における当社または執筆業務委託先の判断であり、予告なしに変更されることがあります。

4. 当社は、記事における誤字脱字等、記事の大意、結論に影響が無いと当社が判断する修正に関しては、記事購読者に特段の通知をすることなく、行うことがあります。

5. 本記事で提供される如何なる投資情報等および調査・分析記事に、またはそれらの正確性、完全性もしくは適時性等に、記事購読者が依拠した結果として被る可能性のある直接的、間接的、付随的もしくは特別な損害またはその他の損害について、当社および当社に記事を提供する執筆業務委託先は責任を負うものではありません。

6. 本記事に掲載される株式等の有価証券および金融商品は、企業の活動内容、経済政策や世界情勢など様々な影響により、その価値を増大または減少することもあり、また、価値を失う場合もあります。投資をする場合における当該投資に関する最終決定は、必ず記事購読者ご自身の判断と責任で行ってください。

7. 当社および執筆業務委託先は、記事の内容に関する記事購読者からのご質問への対応など、個別相対性のある追加サービスは行いません。但し、記事内容につき不適切な内容があり、当該内容について確認、修正、削除依頼をいただく場合はこの限りではありません。

8. 本記事に掲載されている内容の著作権は、原則として当社または執筆業務委託先に帰属します。記事購読者は、本記事で提供される情報に関して、当社の承諾を得ずに、当該情報の複製、販売、表示、配布、公表、修正、頒布または営利目的での利用を行う権利を有しません。

9. 本重要事項(ディスクレーマー)は随時アップデートされることがあります。最新の内容をご確認ください。

当社および執筆者による表明

1. 当社の取締役及び、発表前の記事に触れる可能性のある当社職員は日本株(個別銘柄)の取引を自粛いたします。但し、当社入社前から保有している株式の売却や相続等、相当の理由がある場合は本人からの事前申請に基づき取引を許可することがあります。また、執筆業務委託先についても、執筆者は特定の日本株(個別銘柄)を売買した場合(新規ポジションをつくった場合に限ります)はその後3ヶ月間、当該銘柄に記事上で言及することができず、また、記事上で言及した銘柄についてはその後6ヶ月間売買を制限されます。

2. 本記事の執筆者は、本記事で表明されている見解が調査対象会社やその証券に対する執筆者個人の見解を正確に反映していることをここに表明します。また、当該執筆者は、これまでに本記事で特定の見解を表明することに対して、直接的または間接的に報酬を一切受領していないこと、また、今後も受領する予定もないことをここに表明いたします。