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食糧問題と飼料用アミノ酸の有望性及び関連企業をひも解く【Longine投資テーマ50】

投資家に伝えたい3つのポイント

  • 飼料添加剤のリジン、メチオニンなどの必須アミノ酸が、将来の人口増加、食糧増産のシナリオの本命製品になるかもしれない。
  • リジン、メチオニン、スレオニンという聞き慣れない必須アミノ酸製品名であるが、飼料に添加することで、牛、豚、鶏肉の増産に大きく貢献している。その関連の世界市場規模、プレーヤーたちを紹介する。
  • 新興国経済の停滞と食肉需要の一時的な落ち込みなど、短期的にはテーマになりにくいが、中期的には関連企業の株価調整とも相まって株式市場でも注目されると考えられる。

当レポートの関連銘柄

  • 住友化学(4005):メチオニンの世界4大メーカーの一角。収益貢献が大きい。
  • 日本曹達(4041):同社35%出資の米国ノーバス社がメチオニンで世界第2位。
  • 味の素(2802):リジン、トリプトファン、スレオニオンで世界最大手の一角。

なぜ、株式市場で食糧問題が注目されるのか

日本の人口は、あと十数年で1億人を割るという少子高齢化が避けられないと見られている。一方、世界の人口は今後も増え続け、2050年には約96億人(現在約70億人)に達すると予測されており、食料問題がその度に深刻な問題として議論されている。ダウケミカルとデュポンの合併、世界最大の農薬企業であるスイスのシンジェンタの中国化工集団による買収合意なども、将来の食糧問題を意識した経済行動と考えられる。

世界の人口増加は、一般的に新興国を中心に増加すると言われているが、宗教的な観点で増加地域を推定すると、ヒンズー教とイスラム教の国がその牽引役になると見られる。一般的には、経済発展によって中所得者が増えると牛、豚の食肉文化が広まり、食肉需要が飛躍的に増加すると考えられている。その反面、先進国では健康志向を背景に鶏肉志向が高まっている。足元は新興国経済の停滞、中東産油国の財政問題などの懸念が大きく、食糧危機を議論する局面ではないものの、中期的には間違いなく顕在化する大きなテーマだと考えていいだろう。

なお、イスラム教信者は豚肉を、ヒンズー教信者は牛肉を食べないことに市場拡大の障壁が立ちはだかっているように見える。しかし、鶏肉は両信者でも問題はない。いずれにせよ、こうした国々の経済が発展して、国民の食の傾向が肉食化に向かうことは時間の問題と考えて良いのではないだろうか。

必須アミノ酸は食肉増産に“必須“の化学製品

アミノ酸は我々の体のタンパク質を構成する重要な栄養素である。動物(人を含む)の体を構成するタンパク質は20種類のアミノ酸から構成されている。しかし、アミノ酸には、体内で自然に合成されるもの、合成されにくい10種類の必須アミノ酸の2種類がある。必須とは体の成長のために必要だと言う意味であり、リジン、メチオニン、トリプトファン、スレオニン、バリンなど聞き慣れないアミノ酸を総称して「必須アミノ酸」と分類しているわけだ。

米国で必須アミノ酸であるメチオニンの製造会社を運営している三井物産の資料によると、鶏の成長促進は、飼料へのメチオニンの添加量によって決まるとされている。実際に孵化してから出荷されるまでの期間を見ると、メチオニンを添加しない場合は120日であるのに対して、添加すると42日で出荷できるようだ。しかも、出荷日が早まるだけでなく、鶏の体重も添加しない飼料で育ったのと比べて、劇的に増えると分析している。即ち、必須アミノ酸は、肥育効果が劇的に改善する切り札になり得る合成・発酵による化学製品と言える。食糧危機を救う本命製品かもしれないのだ。

飼料用必須アミノ酸の世界市場の規模は

世界的な公式の統計は存在しないものの、製造企業からのヒアリング、及び、様々な資料を参考にすると、世界市場の規模は、リジンで年間200万トン弱、メチオニンで同100~110万トン、スレオニンで同33万トン、トリプトファンで同9,000トンと推定される。必須アミノ酸の市況は、その時の需給関係で変動するが、量産規模が年間100万トンを超えるリジン、メチオンンの年間市場規模は4,000億円から5,000億円(110円/ドル換算)近くに達していると推定できる。これらの市場の年間平均成長率は、新興国などにおける所得増加→食肉文化の進行により、+4~5%と見られる。昨今の世界経済の状況を勘案すると、非常に魅力的な成長率と考えていいだろう。

世界の製造会社は限られる

必須アミノ酸は、発酵あるいは化学合成によって製造されている。天然と同じものを製造するわけだから、技術力、資本力、世界的なネットワークがこのビジネスには必要不可欠である。従って、リジン、メチオニン、スレオニンなど主要な必須アミノ酸メーカーは世界中で3~5社に限られてくる。

リジンでは、GBTグループ(中国)、CJ第一製糖(韓国)、味の素、Evonic(独)の4社。
メチオニンでは、Evonic(独)、ノーバス・インターナショナル(米国)、Adisseo(中国の藍星集団が買収)、住友化学の4社。なお、ノーバス社は三井物産65%、日本曹達(35%)の米国合弁会社である。
スレオノンでは、MeiHua(中国)、Evonic(独)、味の素、CJ第一製糖(韓国)など。
トリプトファンでは、Evonic(独)、味の素の2社。

恩恵を受ける企業群は

メチオニン:

米国のノーバス・インターナショナルはかつて三井物産(8031)と日本曹達(4041)がモンサント社から買収した会社だ。三井物産が65%、日本曹達35%の出資比率であり、日本曹達にとっては重要な持分法対象の関連会社であり、経常利益に大きく貢献する。

住友化学(4005)は2018年まで世界の需給はひっ迫気味で推移すると判断しているようだ。現在、愛媛県新居浜工場に年産14万トンの設備を有しているが、2017年初めまでに+10%増強の同15~16万トンに引き上げることを決定済み。さらに、2020年までに同15万トンの新設備を日本及び海外のどこかで建造する構想を持っている模様。その建設費用は500億円強とも言われ、サウジアラビアでの石油化学プラント建設以来の、大型投資となる可能性が高い。

リジン、スレオニン、トリプトファン等:

味の素(2802):1965年に飼料用アミノ酸事業に進出。仏、米国など世界4拠点で製造販売を行う。業績も好調で2017年3月期を最終とする中期計画での目標営業利益910億円を、1年前倒しの2016年3月期で達成へ。

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