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紙オムツ向け高吸水性樹脂など周辺素材の世界需給動向と関連企業を探る【Longine投資テーマ50】

投資家に伝えたい3つのポイント

  • 世界の人口が新興国を中心に伸び続ける中で、紙オムツは世界的に普及が進行する見通しだ。紙オムツ向けの資材である高吸水性樹脂や、バックシート材の不織布の需要も同様に伸長が見込まれる。
  • 一方、急速な高齢化が進行する日本を始め、中長期的には中国や欧米諸国での高齢者人口の増加に伴い、より吸水性の高い樹脂材料を多く使った大人用紙オムツの需要拡大も加速しそうだ。乳児向け、高齢者向けのダブル需要が市場拡大を加速することになろう。
  • 高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer、以下SAP)は、各紙オムツメーカーの要求する吸水性、及び、その他の特性から、紙オムツメーカーとSAPメーカーの関係に強い取引関係が見られる。シェアを拡大する紙オムツメーカーと協業を図るSAPメーカー、また、オムツの重要素材であるバックシート※材料の不織布メーカーにも大きな恩恵がありそうだ。

※バックシート:紙オムツの外側表面材料

当レポート関連銘柄

  • 日本触媒(4114):世界第2位のSAPメーカー。原料からの一貫生産で競争力。
  • 三洋化成工業(4471):世界第4位のSAPメーカー。70%出資の子会社で展開。
  • 住友精化(4008):世界第6位のSAPメーカー。売上高比率が60%強と影響大。
  • 東レ(3402):紙オムツのバックシート(不織布)で世界第1位。
  • 三井化学(4183):紙オムツのバックシシート(不織布)で世界第2位。

なぜ、株式市場で高吸水性樹脂が注目されるのか

紙オムツメーカーには、ユニチャーム、大王製紙など四国を基盤とする企業が多い。これは元々、四国の豊かなパルプ資源を赤ちゃんの尿を吸収する素材として商品がスタートしたのが始まりだ。その後、高吸水性樹脂(SAP)が開発され、パルプの消費量を抑えた現在の紙オムツが登場することになった。SAPにはそれ自身の重さの数10倍もの尿を吸収し、ジェル状に固める性質があるため、SAPを吸収体として使用する紙オムツが一気に主流となったのである。

このSAP、元々は石油を原料に作られるアクリル酸と苛性ソーダから製造される。生産は簡単なように見えるかもしれないが、吸収率、保水率などの微妙な技術を必要としており、これに長けた日本メーカーが世界をリードしている。世界的な紙オムツメーカーであるP&G、キンバリー・クラークを始めユニチャーム、大王製紙、花王などのメーカーは、それぞれの製品特性によりSAPの調達先を厳格に決めており、その結果、SAPの供給系列のような構造が一般化している。

日本は既に少子高齢化の時代に突入しているため、赤ちゃん用の紙オムツの需要は伸び悩んでいるのが現状だ。しかし、今後は更なる高齢化に伴い、大人用紙オムツの需要が劇的に増える可能性が指摘されている。国内の生産枚数を見ると、依然として赤ちゃん用が大人用の2.1倍(2015年実績)の規模を誇っている。しかしながら、製品中に使われるSAP、及び、バックシート素材の単位当たりの使用量は、大人用が赤ちゃん用の数倍もあるため、大人用オムツのSAP総使用量は、赤ちゃん用と互角との見方もある。最近では訪日観光客による日本製紙オムツの“爆買い”も話題になったが、これは日本製の紙オムツの品質、安全性が世界的に評価された証左であると言えよう。

他方、中国での一人っ子政策の見直し、新興国(インド、東南アジア、中近東諸国等)での人口増加、更には欧米、中国、日本などで急速に進行する高齢化による大人用オムツの需要が上乗せされる見込みだ。ちなみに、一人当たりGDPが3,000ドルを超えると紙オムツの普及が進むとの分析もあるようだ。こうした状況を踏まえると、紙オムツ及び関連材料の世界市場は、少なくとも2020年まで成長し続けると言っても過言ではないと考える。

アナリストが注目する3つの視点

視点1:SAPの世界市場は2015年(暦年)で約230万トンと見られ、今後も年率+6~9%の成長が見込まれる。仮に年率+8%で成長すると、2020年には330万トン以上の需要が見込まれることになる。他方、世界の供給能力は2015年末で350万トン弱と推定されているため、現時点では供給過剰の状態だ。2015年下期以降、SAPメーカーの株価が下落し続けている背景には、この供給過剰によるSAP出荷価格の低下により、収益の悪化懸念があると考えられる。

視点2:重要なポイントはここにある。確かに、足元の需給関係は供給過剰であるが、前述した通り、トップクラスの世界の紙オムツメーカーは、価格が安いからと言って後発の新興国SAPメーカーからは調達しない。訪日外国人が何故、日本で紙オムツを“爆買い“するのかを考えれば、答えは自ずと明らかである。

したがって、現時点での実質的な需給関係はかなり良好と判断してもいいだろう。2017~2018年には日本触媒、住友精化、三洋化成(SDPグローバル)が中心となって年産能力を+29万トン増やす計画となっているが、この程度の増強では2020年時点では供給不安が懸念されると筆者は予想する。

視点3:他方、紙オムツのバックシートの材料である不織布(ポリプロピレン製)は、現時点でも需給がひっ迫している模様だ。それを物語るかのように、トップメーカーの三井化学は最近、国内の生産能力を大幅に引き上げる計画を公表している。

恩恵を受ける企業群は

高吸水性樹脂(SAP)の価格が供給過剰で低下したと前述したが、その価格低下は、原油安に伴いSAPの製造コストが下がったこと、及び、紙オムツメーカーがSAPの値下げを要求したことが主要因と考えられる。従って、2016年度前半までは、このSAP値下げの影響が収益にマイナスに働くと予想されよう。しかし、既に原油価格は2月を底に反転し始めており、今後はSAPの出荷価格は改善に向かい、収益回復の可能性が出てきたと考えられる。

売上高に占めるSAPの比率では、住友精化(4008)が60%強、三洋化成(4471)が25~30%程度、日本触媒(4114)が25~30%程度と見られる(いずれも筆者推定)。

今後も世界の紙オムツ需要は着実に増加するとみられる。中長期的視点で考えれば、こうした企業の株価を下落した局面でコツコツ拾うのが手堅い方法だと考える。

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