企業IR記事とは
  • その他
  • 企業IR
  • Thu May 26 23:00:00 UTC 2016
149人の方が、この記事を参考になったと投票しています。

カメラだけでは語れない。オリンパス 医療分野世界トッププレーヤーへの道筋

オリンパス株式会社 代表取締役社長執行役員 笹宏行 × Longine IR部

オリンパス株式会社(証券コード7733。以下、オリンパス)の笹宏行 代表取締役社長執行役員に、2016年3月に発表した新中期計画「2016経営基本計画」(16CSP)の狙いとオリンパスが将来目指す姿についてお伺いしました。

Longine IR部から投資家に伝えたい3つのポイント

  • オリンパスの成長戦略16CSP(Corporate Strategic Plan)は、5年間で一株利益を現状の約2倍の320円にする内容。
  • 成長ドライバーは医療事業の内部成長であり、世界シェア70%以上の消化器内視鏡の磐石な基盤をベースに、競争力のある製品が揃った外科領域でシェアを高める計画。
  • 世界トップレベルの医療機器メーカーを目指すため、“Business to Specialist”を合言葉に、専門性の高い顧客ニーズを正しく理解し、的確なソリューションをスピーディーに提供していく考え。

もはやデジタルカメラでは語れない、医療機器に集中を進めるオリンパスの現在

Longine IR部(以下、Longine):オリンパスは2016年3月に新しい中期計画「2016経営基本計画(16CSP、Corporate Strategic Plan)」を発表しました。そこでこの16CSPの内容に入る前に、まずオリンパスの現在の姿を整理してください。デジタルカメラというイメージを持つ方も多いかと思いますがいかがでしょうか。

オリンパス株式会社 代表取締役社長執行役員 笹宏行(以下、笹):現在のオリンパスの屋台骨は医療機器です。2013年3月期からは2016年3月期までの経営基本計画として「中期ビジョン」を掲げ事業ポートフォリオの再構築、コスト構造の見直し、財務の健全化、ガバナンスの再構築等を進めてきました。この結果、全体としては信頼を回復しつつあり、経営再建に目処をつけることができたのではないかと評価しております。一方で、事業の面で見れば、消化器内視鏡と処置具をメインとする医療事業が大変順調に成長し、全社の売上・利益を牽引する大黒柱になっています。デジタルカメラを含む映像事業は売上高で全社の10%に満たず、利益は損益トントンの水準ですから、現在のオリンパスは収益面で見れば医療機器の会社と言えるでしょう。

Longine:オリンパスは投資家目線で考えるとテクノロジーに裏付けされた医療事業の企業(MedTech Company、メドテック・カンパニー)と見るべきですね。この「中期ビジョン」の達成度はどうでしたか。

:おおむね狙い通りの成果を上げたと考えています。評価指標として投下資本利益率(ROIC)10%以上、営業利益率10%以上、フリーキャッシュフロー700億円以上、自己資本比率30%以上という4項目を掲げましたが、一時的な特殊要因の影響があったフリーキャッシュフローを除けば、全ての指標において、目標水準にほぼ到達することができました。

Longine:事業ポートフォリオの面でも、情報通信事業やバイオロジティクス事業などの非中核事業から撤退されました。

:その通りです。従って、体制面でも数値面でもオリンパスはいよいよ「持続的発展ステージ」の時期を迎えたと考え、経営再建のステージからギアをシフトアップし、16CSPという新しい中期計画を策定したのです。医療事業に対してこれまで以上に経営資源を重点投入し、科学では規模は小さいですが安定的な利益創出を、映像事業については、しっかりと損益をコントロールすることで収益性を高め、ROE15%をコンスタントに実現し、2016年3月期の会社予想一株利益(EPS)163円(*)を2021年3月期に倍増の320円にするという意欲的な成長戦略です。

(*)16CSP発表時の予想値(実績は183円)

 “See & Treat(診断と治療)”のワンストップソリューションで医療費抑制圧力の高まりを追い風にする

Longine:では、新成長戦略16CSPの前提となる事業環境をどう見ていますか。先進国はいずれも高齢化が進み医療費抑制の圧力がますます高まると予想されます。医療事業をさらに深掘りすることが得策でしょうか。

:たしかに高齢化が進む国々では医療費抑制の圧力が強まっていますので一般的に厳しい事業環境と言えるかもしれませんが、オリンパスにとっては「追い風」だと考えています。

例えば、病気の発見が遅れ、病状が進行してしまうと、高価な投薬や手術が必要になり、医療費も大きくなります。当然、大手術になれば、回復にも時間がかかりますので、患者さんの身体的な負担も重くなってしまいます。

ところが、オリンパスが扱う消化器内視鏡と処置具を考えてみてください。消化器内視鏡を使えば「早期診断」が可能で、仮に病変部が見つかったとしても一定程度の大きさであればそのまま処置具を使って体に負担をかけずに治療することができます(例えば消化器内視鏡で見つけたポリープを処置具で取る)。さらに消化器内視鏡と処置具では取りきれないサイズの病変部であっても、外科内視鏡を使った腹腔鏡手術によって、開腹手術よりも身体的な負担の少ない「低侵襲治療」を行うことができます。つまり、早い段階で病気をいち早く見つけ、体にかける負担を小さくしながら治療をすると、患者さんの回復も早まり、医療費も少なく済むことが多いのです。

Longine:「早期診断」と「低侵襲治療」が高齢化の進む社会では最適解なのですね。

:この“See & Treat(診断と治療)”を幅広い領域でワンストップショップで実現している企業は世界広しといえどもオリンパスだけだと自負しています。この追い風をしっかり受けて、医療分野における世界トップレベルのプレーヤーを目指そうというのが長期的な目標です。

“Business to Specialist“に徹し、付加価値を生み続ける

Longine:しかし欧米の大手医療機器メーカーは規模の拡大を進め、規模の経済をもとに価格訴求をしているように思います。

:医療機器の分野について言えば、オリンパスは光学技術、映像技術、医療機器を作るノウハウに強みがあり、世界的に見てもオンリーワンといえる技術群と製品群を有していると自負しています。とはいえ、価格圧力というのはビジネスにはつきものです。そこで、新中期経営計画16CSPを策定するにあたり、当社の強み、ポジショニングをあらためて整理し、戦う領域を明確にしました。オリンパスではこれを“Business to Specialist”と表現し、戦略の基盤に据えました。

Longine:専門家が付加価値を認めてくれるようなビジネスをする、そのような意味でしょうか。

:その通りです。現在、オリンパスの事業領域は医療事業、映像事業、そして顕微鏡などの科学事業から成りますが、いずれの領域においても、オリンパスの強みというのは、専門性の高い顧客(Specialist)ニーズを正しく理解し、製品などを通じて的確なソリューションをスピーディーに提供していく点にあると考えます。これはオリンパスでは日頃の業務で当たり前のように行っていることですが、今一度、この考え方を全社的に明確化し、Specialistの要求やニーズのある市場でビジネスを強化、展開していくべきだと考えました。このように、当社の価値を認めていただける領域で付加価値をしっかり生み出していくことができれば、単純なコスト競争とは一線を画して持続的に成長できると考えます。

Longine:デジタルカメラ市場も縮小していますが、ここでも”Business to Specialist”という考え方は有効ですか。

:これまでオリンパスは中期ビジョンの期間においてコンパクトカメラを大幅に縮小し、収益性の高いミラーレス一眼へのシフトを加速してきました。ミラーレス一眼においては、軽量小型、防塵防滴性能等で他社と差別化を図っています。実際、高齢の方や報道の方には重たい一眼レフを持ち歩く場合に比べて機動力が高いと評価されています。こうしたユーザーの声をしっかり捉えて適切な製品を販売していくことが必要になるのです。自動車メーカーに例えていえば、富士重工(スバル)のような存在にしたいと考えています。

オリンパスは医療機器領域では日本のトップですが、グローバルにはまだトップクラスを伺う規模です。今後当社が世界で勝ち残っていくためには、全社をあげて付加価値追求のギアを上げなければなりません。

新経営基本計画16CSPの「EPS倍増」計画のカギは、医療事業へのさらなる経営資源投入

Longine:新経営基本計画16CSPは「持続的発展ステージ」ということですが、数値目標を教えてください。

:経営目標は、資本効率性を図る指標としてROE15%、事業収益性としては営業利益率15%以上、事業成長性ではEBITDA成長率二桁、最後に健全性ですが自己資本比率50%を掲げました。以上の経営目標を達成した結果として、16CSPの最終年度となる2021年3月期には、売上高11,000億円、営業利益1,700億円、EPS320円となる見込みです。営業利益は2016年3月期の実績から約650億円増加することになりますが、医療事業がこれを牽引します。医療事業の営業利益はこの間+850億円の増益の2,250億円を計画しています。

◆図表1 事業ポートフォリオの方向性

出所:オリンパス 2016経営基本計画(16CSP)/財務戦略よりLongine IR部作成

Longine:医療事業に経営資源を重点的に投入するということですが、具体的にどの分野の成長が見込めるのか説明してください。

:第一の柱は消化器内視鏡関連です。オリンパスが優位にある消化器内視鏡(世界シェア70%以上)で圧倒的なシェアを確保しながら、継続的に売上高成長と利益拡大を図りつつ、消化管や気管支などの検査・治療に消化器内視鏡と組み合わせて使われる処置具の拡販にアクセルを踏みたいと考えています。処置具領域は消化器内視鏡に比べてシェアが低いため事業拡大のポテンシャルが大きいといえます。高齢化により検査数、処置数の増加に加えて、これまで行ってきた製品ラインアップ拡充、セールス要員の増員による販売力強化で処置具の販売を伸ばす計画です。

外科分野を第二の基幹事業にする

Longine:第二の柱は何でしょうか。

:第二の柱は外科分野です。これを消化器内視鏡に続く基幹事業に育てたいと考えます。競争力のある製品が揃い、 “See & Treat”をキーワードに、外科分野で低侵襲治療におけるオリンパスブランドを確立したいと考えています。

Longine:外科分野でも内視鏡で見て、治療もするということですね。ただ、現在のオリンパスのシェアは外科分野では2割前後という推定もあります。なぜいま攻め時なのですか。

:まず、画像診断の分野ではソニーとの協業効果によって、4K技術を搭載した外科内視鏡システムを開発しました。外科医のニーズは、より高精彩で立体感のある画像で、確実に患部を見ながら治療したいというものです。私たちも家電販売店などで従来型と4Kのモニターを見比べると4Kに軍配を上げるでしょう。これは医療現場でも同じで、製品発表後国内外のドクターから大変高い評価を得ています。当然従来のHD画質に比べてデータ量は4倍に増えるのですが、実際にドクターが手術をしている手元の動きと、それを映し出すモニターの動きに遅れがあってはいけませんので高速レスポンスを実現しています。実はこれが最も開発に苦労した点の一つで、ソニーが業務用カメラで培った高速伝送技術が生かされています。

Longine:一度4K画像を見ると、そちらに移行したくなりますね。

:われわれはこの4K外科内視鏡システムを腹腔鏡手術における新しい業界標準にしたいと考えています。さらに、このユニークな製品をきっかけに、同じ腹腔鏡手術で血管の封止や組織の切開・剥離(はくり)に使われるエネルギーデバイスであるサンダービートを拡販したいと思います。このサンダービートは、血管の封止に優れるバイポーラ高周波エネルギーと、切開機能に優れる超音波エネルギーを同時に出力できる世界初のデバイスであり、将来の外科分野の成長を牽引する戦略製品と位置づけています。今後はさらに品ぞろえを拡充しながら、外科内視鏡システムと共に販売を強化していきます。

例えば、日本政府は医療費削減のために病床(ベッド)数を減らす方針を打ち出しており、今後、病院数は横ばいか、減少することが予測されます。しかしながら、高齢化に伴って、検査・処置数は増加傾向にあり、中でも患者さんのQOL向上や、医療費削減につながる低侵襲治療の症例数は今後も拡大すると見ています。こうした中、症例数に直接結びつくディスポーザブルデバイスの重要性が高まると当社は想定しており、これまで戦略的に強化を進めてきた外科分野や処置具分野において、症例数ベース型ビジネスモデルに最適化されたバリューチェーンを構築して、シェア獲得と売上高成長を果たしたいと考えています。

Longine:新興国への対応はどうなりますか。

:新興国は経済発展に伴って医療ニーズが高度化するとともに、高齢化の進展によって高い成長が期待できます。しかし、国ごとに医療インフラの発展度が異なります。オリンパスとしては、地域ごとの特性をよく踏まえて適切な時期に適切な戦略を採っていく方針です。

16CSPの目標水準は内部成長で実現する

Longine:この業績目標はM&Aなどに頼らない内部成長で実現すると考えていいのですか。

:そうです。ご存知かもしれませんが、実は2015年4月に16CSPを見据えた組織改革をしました。それまではカンパニー型の事業運営をしていましたが、これをマトリックス型に変更し全体最適を目指しています。それまで各事業に分散していた(技術開発、製造、販売、品質・製品法規制などの)機能を、横串をさして集約し効率化を進めた一方、医療では消化器科呼吸器科、外科、泌尿器科婦人科、耳鼻咽喉科、医療サービスの5つのビジネスユニット(BU)に細分化しました。16CSPはこのBUとの綿密な討議を経て練りに練って策定したものであり、不確実性の伴うM&Aありきの戦略ではなく内部成長で達成しようというものです。

一方で、昨年新設した事業開発室において、新規事業の開拓・拡大のためにM&Aも含めてさまざまな可能性を探らせています。

Longine:M&Aもありうるということですね。

:いずれかの時点にはあるかもしれません。しかしオリンパスとして強みを発揮できる領域を無視してシナジーの望めない「飛び地」に行くことは一切考えていません。

オリンパスは2019年に創業100周年を迎えます。また、16CSPの計画期間の後にもさらにステップアップをしなければいけません。体質強化に目処がつきつつあるからこそ、将来への備えを準備し始めているのです。

オリンパス株式会社 代表取締役社長執行役員 笹宏行

株主還元よりも利益成長の局面

Longine:医療事業にアクセルを踏み、医療分野における世界トップレベルのプレーヤーを狙う土台をつくるのが16CSPということでしょうか。体制強化や成長投資も必要ですが投資家への還元はどうなるのですか。

:当社はこの16CSPを「持続的な発展を実現するための、足元固めと攻めの事業ポートフォリオの構築」と位置づけております。経営資源を配分する上では、まず足元固めとして、安定した財務基盤を確保します。その上で、攻めの事業ポートフォリオを構築するために、医療事業を中心とした成長スピードを維持・加速するための投資を、M&Aも含め、積極的に行ってまいります。以上の財務基盤の強化と成長投資を実施した上で、株主還元を実施していきます。総還元性向(当期純利益のうち、配当や自社株買いに充当する金額の比率)30%を目安に、株主の皆様のご期待に応えてまいりたいと思います。

ぜひ個人投資家の皆様には、オリンパスが高い利益成長を目指す好位置にあることを知っていただき、配当だけでなく利益成長を楽しみにしていただきたいと思います。

Longine:本日は貴重なお話をありがとうございました。

:こちらこそありがとうございました。

この記事は参考になりましたか?

はい いいえ

149人の方が、「この記事が参考になった」と投票しています。

この企業へのご意見

関連記事一覧

株初心者向け入門サイト 株1[カブワン] 人気の記事

1からはじめる初心者にやさしい投資信託入門 投信1[トウシンワン] 人気の記事

企業IR記事に関する重要事項(ディスクレーマー)

1. 本記事は、株式会社ナビゲータープラットフォーム(以下、「当社」)または執筆業務委託先が、対象企業の依頼に基づき、対象企業から対価を受け取って作成しています。対象企業の特徴を周知すること、読者に情報を提供することのみを目的として作成したものであり、投資に関する意見や判断を提供するものではなく、証券その他の金融商品の売買その他の取引の勧誘を目的としたものでもありません。

2. 本記事は、当社または執筆業務委託先が、対象企業への取材で得た情報をはじめ、信頼に足ると判断した情報源に基づき作成しますが、完全性、正確性、または適時性等を保証するものではありません。

3. 本記事で提供される見解や予測は、記事発表時点における当社または執筆業務委託先の判断であり、予告なしに変更されることがあります。

4. 当社は、記事における誤字脱字等、記事の大意、結論に影響が無いと当社が判断する修正に関しては、読者に特段の通知をすることなく、行うことがあります。

5. 本記事で提供される如何なる情報等および調査・分析記事に、またはそれらの正確性、完全性もしくは適時性等に、読者が依拠した結果として被る可能性のある直接的、間接的、付随的もしくは特別な損害またはその他の損害について、当社および当社に記事を提供する執筆業務委託先は責任を負うものではありません。

6. 本記事に掲載される株式等の有価証券および金融商品は、企業の活動内容、経済政策や世界情勢など様々な影響により、その価値を増大または減少することもあり、また、価値を失う場合もあります。投資をする場合における当該投資に関する最終決定は、必ず読者ご自身の判断と責任で行ってください。

7. 当社および執筆業務委託先は、記事の内容に関する読者からのご質問への対応など、個別相対性のある追加サービスは行いません。但し、記事内容につき不適切な内容があり、当該内容について確認、修正、削除依頼をいただく場合はこの限りではありません。

8. 本記事に掲載されている内容の著作権は、原則として当社または執筆業務委託先に帰属します。本記事で提供される情報は、個人目的の使用に限り、配布また頒布が認められますが、原則として、読者は当社の承認を得ずに当該情報の複製、販売、表示、配布、公表、修正、頒布または営利目的での利用を行う権利を有しません。

9. 本重要事項(ディスクレーマー)は随時アップデートされることがあります。最新の内容をご確認ください。

企業IR記事に関する当社および執筆者による表明

1. 対象企業から対価を受け取って企業IR記事を執筆・掲載する場合、当該記事の掲載から6ヶ月間は、当社および執筆業務委託先がLongine(ロンジン)において、対象企業に対する投資に関する意見や判断に言及する記事を執筆することはありません(契約開始以前の記事は掲載を継続し、また、当該企業に関する最新の企業IR記事掲載から6ヶ月経過後は投資に関する意見や判断に言及する記事の掲載を行うことがあります)。但し、特定のテーマに関する関連銘柄として複数企業を紹介する場合において、対象企業がその内の一社であるようなケースでは、関連銘柄の一例として紹介することがあります。

2. 当社及び本IR記事の執筆に関与した執筆業務委託先と対象企業との間に重大な利益相反関係はありません。例外的に重大な利益相反関係がある場合は、企業IR記事の末尾にその事実を明記致します。