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  • Sun Oct 23 23:00:00 UTC 2016
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機械は人間の敵ではない!オムロンのAIとロボットの活かし方

株式市場でもAI、ロボット、自動運転といったテーマは頻繁に取り上げられる。しかし実際にそれらの技術がどのように活用されるのかは見えにくい。Longine IR部は2016年10月4日から7日まで千葉県千葉市の幕張メッセで開催された「CEATEC JAPAN 2016」を取材。オムロンの展示ブースでAIやロボット、自動運転の活用について聞くことができた。この展示会全体の印象や、オムロンの目指す未来について解説する。

Longine IR部から投資家に伝えたい3つのポイント

  • CEATECは先端技術の展示会として企業の技術関係者並びに投資家からも注目を集めている。今年はAI、ロボット、自動運転、IoTといった株式市場でも注目される多くの次世代技術の展示がされていた。
  • オムロンは、身の回りにある様々な情報から必要な情報のみを取り込み、より賢く価値に変換する「センシング&コントロール+Think」という独自技術を提唱。機械が人に合わせて賢く動作する最新技術の象徴としてギネス世界記録認定の卓球ロボットを展示。
  • さらに、オムロン独自のセンシング技術を生かした屋内搬送用モバイルロボットや、自動運転におけるドライバー運転集中度センシング技術などにより、人間の仕事や生活の質の向上を提案。

2016年はCEATECのコンセプトが変わった

「CEATEC(シーテック)」は開催期間中メディアでも頻繁に取り上げられるが、一般にはあまりなじみがないかもしれない。CEATECは“Combined Exhibition of Advanced Technologies”の略称で、毎年秋に国内外のIT・エレクトロニクス分野の企業・団体が最先端技術やそれらに関連する製品を発表する国際的な展示会である。次世代テクノロジーの潮流と各社の事業展開を垣間見られることから、技術関係者のみならず投資家にとっても企業の将来の姿を考える最適の場となっている。

2016年、そのCEATECのコンセプトが大きく変わった。

これまでは、その時代ごとの最先端のデジタル家電やデバイス、車載向け電子機器など単品の展示が多かったという印象がある。ところが2016年は「社会」「街」「家」など利用シーンごとのエリアと、「CPS/IoTを支えるテクノロジー、ソフトウェア」エリアで区分され、ソリューション提案を中心としたコンセプト展示が主となっている。話題のAIやIoTは実際は目に見えにくい。主催者は、これらの活用シーンを各社の提案するストーリーに組み込む方がユーザー目線に近く、見る者にとって分かりやすいアプローチと判断したのではないだろうか。

卓球ロボット「フォルフェウス」はオムロンの最新技術の象徴

CEATECの中でも国内大手電機メーカー、自動車・部品メーカー、通信会社をはじめ、海外企業も数多く出展した「社会」エリア。ここでひときわ注目を集めたのが、オムロンブースの卓球ロボット「フォルフェウス」だ。実際に卓球ロボットとラリーをできるとあって、プレー希望者が後を絶たない。

フォルフェウスは、2013年に中国で同社が開催した総合展示会、そして2014年にCEATECに出展されて以来、改良が重ねられてきた。当初は人間と何とかラリーが“できる”状態だったが、2015年には球の動きを予測するアルゴリズムを大幅に改善。対戦する人間に対してプレーが上達するようにアドバイスをする機能が追加された。そして今年、2016年はAI機能を搭載。人間の習熟度に応じて返球できるようになった。ディープラーニング(深層学習)によって3回のラリーで対戦者のレベルを判断することができる。まさに驚きの進化だ。

フォルフェウスが体現するのは「IoTやAI時代におけるオムロンの技術進化」である。そして、これはオムロンのCEATECにおける展示テーマに他ならない。ものごとの状態を感知し、その情報を処理し制御する「センシング&コントロール」はオムロンのコア技術だ。フォルフェウスは、これに「+Think」という人間の知恵、ここではAI技術を加えた「人と機械の最適な調和」を誰もが身近に体験できる展示だったといえよう。

オムロンの広報担当者はフォルフェウスについて次のように説明する。

「フォルフェウスは、人と機械の最適な調和を目指す当社の技術進化の象徴です。人間とロボットが卓球で“対戦する”のではなく、“互いの成長を図る”ことを目的としています。今年は「+Think」の技術を加えることで、ラリーの最中に相手の卓球のレベルを瞬時に判断し、相手のレベルに合わせた返球を行うことができるようになりました。ラリーを通じて人の成長をも促すことができます」

フォルフェウスはこのほど、ギネス世界記録に「最初の卓球コーチロボット」として認定された。「世界一」の記録を認定する機関が「最初」を認定するのは珍しい。フォルフェウスがもたらした「人間と機械がともに成長する」という理念のインパクトがそれだけ大きかったのではないか。

オムロンが注目するソーシャルニーズ

この「+Think」の概念は、オムロンの連結売上高のうち最も大きな比率を占めるFA(ファクトリーオートメーション)向け事業を今後どのように変化させるのだろうか。

前出の同社広報担当者は「+Think」の意味とFA事業との関わりをこう表現した。

「これまでのオートメーションは、人間の仕事を機械に置き換えることが中心でした。しかし当社は「+Think」の技術により機械に人間の知恵を加えることで、将来的には機械と人間の関係をより密接にし、機械が人の能力やモチベーションを向上させるようにしたいと考えています。実際に、フォルフェウスは卓球のラリーを通じて人間の能力やモチベーションを上げることに成功しているのではないでしょうか」

AIやロボットは人間の役割を奪うという意見もある。しかし、オムロンはそう考えてはいないようだ。先進国をはじめとして高齢化が進み労働力人口が減少していく国は多い(図表1参照)。

これまでロボットの稼働台数は年々増加してきたが(図表2参照)、将来の労働力人口減少を考慮すればこれまで以上に人間がロボットのサポートを必要する場面も多くなるであろう。

しかし、機械は人のサポートだけでなく能力向上を促せる可能性を秘めている。ロボットも人も共に進化していける未来、これらがオムロンの感じているソーシャルニーズであり、そうしたニーズに対応する技術の象徴としてフォルフェウスを生み出したというわけだ。

ソーシャルニーズをうまくとらえたロボット事業

オムロンが扱うロボットはフォルフェウスだけではない。2015年に米国の産業用ロボットメーカーのアデプト テクノロジーズ(現オムロン アデプト テクノロジーズ)を買収。今回のCEATECでは、共同で強化に取り組んでいるセンシング技術を活用した「屋内用モバイルロボットLDプラットフォーム」を展示した。

このロボットは自走式で、内蔵されているレーザースキャナで動作環境を測定し、マッピング技術により自分が移動可能な範囲と地図を同時に作成する。最大130キログラムを搬送可能で、1秒間に180センチメートル移動することが可能だ。生産現場や物流倉庫などで人や障害物にぶつかることなく作業をすることができる。

オムロンはなぜ今、搬送用のモバイルロボットに注力しているのだろうか。

AIやIoTの普及が進めば今後様々な環境で大きな変化が出てくる。その変化が大きいのはおそらくモノづくりの現場であろう。オムロンの広報担当者は次のように話す。

「生産現場では、多品種少量生産による搬送工程の複雑化から、モノの搬送はロボットに任せるところが増えていきます。生産状況に応じて搬送工程を変更できるモバイルロボットの登場により、フレキシブルでスマートなものづくり現場を実現できます」

では、今回発表した搬送用モバイルロボットの反響はどうなのか。商品コンセプトが斬新だと逆にユーザーが躊躇するケースも多い。しかし、広報担当者は自信をのぞかせ、次のように語った。「オムロンとしての発売は2017年1月の予定ですが既に多くのお客様から引き合いをいただいています。生産ラインや物流倉庫などで活用されていきそうです」

ロボット事業では、ソーシャルニーズをしっかりとつかんでいることで事業が拡大しつつあると見てもよさそうだ。

自動運転にもオムロンの複数の技術が生きる

将来的に市場規模の拡大が期待できるのはロボットだけではない。自動運転も多くの注目を集める領域の一つだ。今後の自動車市場において、自動運転技術は、歩行者の安全のみならず、ドライバーにとっても運転の安全性を担保するための重要な鍵を握っている。高齢化が進む先進国ではなおさらだ。

オムロンは今回、自動運転に関しても先進的な取り組みを披露した。それが「ドライバー運転集中度センシング技術」だ。これは、長年オムロンが取り組んできた「顔画像」のセンシング技術と最新のAI技術である「時系列ディープラーニング*」を融合したものである。今回の当社の取り組みでは動画をもとにデータを抽出し、自動運転の中でドライバーの動的状態を見極めることができる。

*時系列ディープラーニング:通常は静止画像認識で高い性能を示す。オムロンは時系列情報を含む多様なドライバー状態の高精度な認識を実現した。

この技術の活用シーンは、自動運転で高速道路を走行している状態のモニタリングに限らないという。昨今、ドライバーの判断の遅れ、運転中のスマホ操作といった不注意、突然の心疾患による事故などが課題視されている。

オムロンの自動運転への取り組みはこれだけではない。今回自社ヘルスケア事業の得意領域でもある血圧計測定技術を応用した「非接触脈拍センサー」も展示した。ドライバーの体表面に電波を発信し、はね返ってきた電波を受信すると脈拍値を測定できるというのだ。

将来的にはこれ以外にもオムロンが有する複数のセンシング技術を組み合わせて、ドライバーの異常状態やその発生リスクを高精度に検出できるようになる。まさに同社ならではの取り組みだ。

オムロンはソーシャルニーズに応えるため、自社で蓄積してきた技術、また時には買収などにより外部から取り込んだ技術なども組み合わせながら対応しているといえるだろう。

取材後の感想

今回、Longine IR部は「社会」エリア以外の「街」「家」エリアなどにも足を運んだ。それぞれのエリアで、多くの企業が最先端技術を活用した商品やデバイスを展示していた。

ただ、オムロンと比較すると、それらの展示にやや物足りなさを感じたことは否めない。最大の違いは利用シーンを前提にした商品展示であったかどうかだ。展示会とはいえ、その提案がより具体的であればあるほど見ている側への説得力は大きい。これがソーシャルニーズを意識する差なのかと考えさせられた。

引き続きオムロンの取り組みに注目していきたい。

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