投資スタンス
目標株価1,000円を維持する。また「長期投資」の注目も継続。自動車の電装化と半導体ウエハーの搬送容器のメインストーリーは引き続き魅力的なテーマである。
投資家に伝えたい3つのポイント
- 2017年3月期Q3累計(4-12月期)決算が発表後株価の水準が落ち込んでいるが電子デバイスのセグメント利益の急落を嫌気したものと推定される-車載向け入力デバイスの海外工場の減損による影響
- 活発な半導体設備の世界的な増勢を映し、同社が世界の50%前後のシェアを有する半導体ウエハー搬送容器(FOSB)、半導体工程内容器(FOUP)の需要が旺盛で在庫を持てないほど引き合いが強い状態が続く-製造子会社の新潟ポリマーの設備増強を行うなど超繁忙が続く
- 2017年3月期はQ4(1-3月期)を100円/ドルで据え置いているが、筆者の予想では上振れの可能性は引き続き高いと考え、2018年3月期も増収増益が続く見通し。
目標株価およびバリュエーション(株価評価)について
前回の目標株価1,000円を継続する。
目標株価の算出根拠は市場平均の株価収益率(PER)15倍と同社の来期予想自己資本利益率約7%を考慮し、フェアーな株価純資産倍率(PBR)は1.0倍前後と判断する。1,000円が短期的な目標株価と考える。
筆者による2017年3月期の業績見通しと会社による業績予想とを比較すると業績のアップサイドはまだ見込めると考えている。を加えて、株式市場が今後は2018年3月期の業績見通しにより注目してくる状況になれば増益トレンドをさらに評価するような局面も来よう。
2017年3月期Q3累計(4-12月期)決算のまとめ
2017年3月期Q3累計決算は、前年同期比▲3%減収、同+55%の営業増益、同+43%の親会社株主に帰属する四半期純利益増益と大幅な増益を達成した。引き続き自動車の各種電子スイッチ、半導体ウエハーの搬送容器などの需要が堅調で利益を牽引した結果である。
たが、決算発表後に株価が急落した要因として、Q2(7-9月期)に対してQ3(10-12月期)の営業利益が▲29%減益となったことが嫌気されたと考える。これはQ3の電子デバイスセグメントで海外の入力デバイス工場での開発用設備の減損損失数億円を計上したことで、同セグメントの営業利益がわずかだが赤字になった。
しかし、筆者は同社の保守的かつ健全な財務への姿勢を示すもので印象はポジティブであると考える。
2017年3月期通期業績予想、見かけは下振れだが
会社側ではQ3累計決算発表後も従来の業績予想を据え置いた。営業利益は前年同期比+29%増益の53億円、親会社株主に帰属する当期期純利益は同+8%の34億円である。
一方、筆者の前回の営業利益予想は65億円、これを今回の決算発表後の取材を踏まえて60億円に下方修正した。これは先ほどの電子デバイスセグメントでの大幅な減損損失計上によるものである。状況は堅調と考えて良いだろう。
2018年3月期、2019年3月期の営業利益は前回予想の70億円、80億円をそれぞれ据え置いた。引き続き入力デバイスの世界的な需要増加と、半導体ウエハーのひっ迫を映した搬送容器、工程内容器の需要増加が業績を牽引しよう。
2017年3月期の配当は、会社予想12.0円(前期9.0円)だが筆者の予想する一株当たり純利益(EPS)に対して22.4%に過ぎない。基本的に同社は配当性向30%を目途にしており、更なる増配の可能性もあろう。
電子デバイスセグメントの期待の分野は
電子デバイスセグメントは主として自動車のキースイッチを中心とした入力デバイスが大きなウエートを占める。キースイッチは日系、外資系の自動車メーカーが最終顧客で採用車種の増加に伴い着実に伸長しているが、画面上をタッチするナビ、エアコンなどのタッチスイッチ類も自動車関連の電装品に注力する家電メーカー向けに好調な推移を見せる。また、これまで不振だったタッチパッドは車載向けの新たな需要開拓が着実に進んでいる。自動車の電装化は電気自動車(EV)の普及とともに市場を更に広げる見通しであり、シリコーン樹脂などの応用開発に強みを有する同社にとって有望分野が広がる見通し。