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富士電機(6504)の三重工場(自販機)訪問取材から見えてきたこと(2014年01月16日推奨終了)

【2014年1月16日に推奨を終了】

目標株価

  • 500円から515円に変更します。
  • 積極的に推奨する株価水準420円以下です。

投資家に伝えたい3つのポイント

  • 目標株価を500円から515円に引き上げ推奨を継続します。
  • 自販機事業の採算性改善には、金融危機以降の構造改革が大きく寄与しています。
  • 三重工場は省エネ技術のショールームでもあり、自販機事業以外への貢献も期待でそうです。

推奨継続

推奨を継続します。民間設備投資の回復を背景にパワー半導体、パワエレの回復が続くと見られること、電力関連は石炭火力を中心に受注残が増加していること、全社的なリエンジニアリング活動によるコストダウンが継続すると見られることなどから、2015年3月期も増益が期待できること、中期的にも老朽化した工場や店舗などをエネルギー効率が高い電気設備に置き換える需要が見込まれ、富士電機はその恩恵を受けられる可能性が高いことが推奨理由です。

2014年3月期の食品流通事業は全社平均を上回る採算性を確保

最近、三重県四日市にある富士電機の三重工場を見学する機会を得ました。富士電機は、戦前に電力機器からスタートした企業ですが、戦後の一時期は、日立、東芝などに倣い、扇風機、洗濯機、ジューサーなどの家電分野にも進出しました。

しかし、その多くは短命に終わり、唯一、消費者に近い分野として生き残ったのが、三重工場の現在の主力品である自販機です。富士電機は、2002年に三洋電機の自販機部門を買収し国内市場でトップシェアのポジションを確立しましたが、2000年代の自販機事業の営業利益率は▲1%~4%に留まり残存者利得を享受するという状態には至りませんでした。

ところが、買収から約10年が経過した2013年3月期から食品流通事業にポジティブな変化が顕在化してきました。連結売上高の約15%に過ぎない同事業が、営業利益では約29%を占め、営業利益率も5.7%と全社平均を上回る利益率を計上したのです。2013年4-9月期)も営業利益率は7.5%と引き続き高い収益性を確保できています。

構造改革効果の刈り取りに成功

大胆な変革は大きな危機を迎えた時にこそ実行されるとよく言われますが、工場見学を終え、同事業にも同じことが言えると実感しました。

構造改革のポイントは以下の5点です。

1.      関東にあった生産工場(2002年に買収した三洋電機の工場)を2011年に閉鎖し生産を三重工場に集約

2.      富士電機リテイルシステムズの東京本社ビルを2011年に撤収し管理部門を三重工場への集約

3.      営業と一体となり季節変動が激しかった需要を平準化し、産の繁閑差を解消(2011年から実行)

4.      生産安定化により生まれた生産能力を部品部材の内製化率の向上に活用

5.      トヨタ生産方式の導入や3DCAD、3Dプリンターの活用などにより生産リードタイムを11日から1日に短縮

以上のように最初に自らのリストラを行った後に、外注契約先の削減や、ユーザーに対して年間を通して安定的に発注を行ってもらう交渉を行い、操業度の安定化や部品部材の内製化率の引き上げを実現してきました。

自販機業界は、エアコンと同じく夏場前に需要が集中する傾向があるため、こうした取り組みを行う以前の生産の繁閑差は約3.5倍もありましたが、現在は1.4倍に縮小しています。トヨタ生産方式の効果でリードタイムも短縮したため製品在庫も3万台から8千台に激減しています。

製品ミックスの改善も寄与

コスト削減だけではなく、製品の競争力の向上も採算性に寄与しています。具体的には省エネ自販機の性能向上と既存製品の改良により生まれたコンビニ向けコーヒーマシンなどの成功です。

ハイブリットヒートポンプ自販機

皆さんもご存じのように飲料用自販機には「温かい飲み物」と「冷えた飲み物」が同じ箱のなかに入っています。このため、2008年から、エアコンなどで使われているヒートポンプ技術を用いて、冷却から生まれる排熱を加熱に使うことでヒータの使用時間を減らす省エネ自販機の導入が始まりました。

2011年からは、冷却を行っていない時も、外部から熱を取り入れるハイブリットヒートポンプ機も富士電機は業界に先行して導入を進めています。

省エネ技術の向上で飲料業界に貢献

ハイブリットヒートポンプの採用に熱交換器や断熱材の改良も加えることで、電気を消費するのは夜間の8時間だけという自販機も既に商用化されています。2011年の震災直後は、自販機は電気を大量消費するということで悪者扱いされましたが、飲料メーカーにとって自販機は、価格コントロールを行いやすいという点で非常に魅力的な販売チャネルです。この魅力的なチャネルを守るためには省エネ技術の向上は避けて通れませんが、こうしたニーズに対応できていることも富士電機の自販機事業の好調の一因と筆者は見ます。

コンビニ向け「一杯ごと挽きたて」コーヒーマシンの追加増産は可能

2013年3月期下期(2012年10月-2013年9月期)から2014年3月期上期(2013年4月-2013年9月期)までは、セブンイレブン向けのコーヒーマシンが好調に推移しました。この製品は、ドライブインなどに設置されているドリップ式挽きたてコーヒー自販機で蓄積された「おいしいコーヒー」を作る技術の蓄積が生かされています。主要部品は既存品を活用して開発されているため、製造コスト抑制できていると推察されます。また、追加のオーダーに対しても即座に対応できる体制が維持されているため、今後、需要が増加した場合でも機会損失は避けられそうだという印象を筆者は持ちました。

今後の注目点

国内の自販機事業は、今後2年程度は従来機から省エネ機への置き換え需要により、安定的に推移すると見られますが、その後は、人口減を背景に縮小に向かう可能性があります。このため、それまでに海外事業やスマート店舗・倉庫などの新規事業を成長事業に育てていくことが求められます。

海外事業については、既に大連工場にて年間1.2万台の出荷実績を持ち、中国市場でシェア1位を確保しています。また、来年からはタイでも現地生産の予定です。現時点での中国での生産規模は三重工場の10%程度ですが、ATMが急速に普及したように、自販機も生活水準の上昇に伴い普及増が期待できるため、今後の動向が注目されます。

工場見学での気づき:三重工場は省エネ技術のショールームとしても機能

富士電機リテイルシステムズ社は2012年に本体に吸収合併され、2013年3月期からは、コンビニなどの商業施設の冷凍・冷蔵設備や電気設備を手掛ける店舗流通事業と合体し食品流通事業セグメントとして運営されています。

自販機事業は、1988年から2002年まで「富士電機冷機」として東証に上場していました。その後も富士電機リテイルシステム社として運営されていたため、独立色が強く自販機の顧客に富士電機の製品を提案するなどの協業の機会は限られていましたが、これが大きく変わっていくことが期待されます。

三重工場はコジェネシステム、燃料電池、ソーラーの活用しスマート工場化が進んでいます(2016年3月期には2011年3月比でエネルギー使用率を30%削減、エネルギー自給率を76%とする計画)。同工場は、富士電機の主力事業である電力制御技術のショールームとしての役割も担っているためです。今後、自販機の大手顧客(飲料メーカー、コンビニ、物流倉庫会社など)に対して自販機以外の商材の拡販にも寄与することが期待できます。

業績予想

業績予想については以下の変更を行いました。

2014年3月期:売上高を7,556億円から7497億円へ(主に電子デバイスを上方修正)、年間配当を5円から6円に修正。

2015年3月期:営業利益を345億円から355億円へ、純利益を190億円から196億円へ、年間配当を5円から6円に修正。

2016年3月期:営業利益を435億円から445億円へ、純利益を241億円から247億円へ、年間配当を5円から7円に修正。

固有のリスク

金利上昇や政情不安によるアジア、中国での設備投資の変調には注意が必要です。

業績ハイライト

出所:実績はSPEEDAをもとに筆者作成。予想は筆者作成

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