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ルネサスエレクトロニクス(6723)は車載と産業用で中期成長が期待できる半導体銘柄(2018年03月29日推奨終了)

投資スタンス

ADAS(自動運転技術)やエコカー(HEV/EV)向け車載用半導体や、スマートファクトリー(産業用イーサーネットPLCやNC装置向けデバイス等)、スマートホーム(スマート家電、ヘルスケア、ホーム・エネルギー・マネジメントシステム等)、スマートインフラ(スマートメーター、エネルギーマネジメントシステム等)などの産業用半導体への注力により中期的な成長が期待できることに注目し「大型株1年」での推奨を開始する。

投資家に伝えたい3つのポイント

  • 目標株価は1,600円で、「大型株1年」として推奨開始。
  • 構造改革の完了により車載と産業用への注力が可能となり中期的な成長が期待できることに注目している。
  • 短期業績への寄与は限定的であるがトヨタ、日産へのSoCの採用が決まったため中長期的に自動運転(ADAS)関連としても注目できる。

なぜ「大型株1年」で注目するのか

同社は、2010年4月にNECエレクトロニクス(NECの半導体部門)を存続会社としてルネサステクノロジー(日立と三菱電機の半導体部門)が合弁しスタートしたマイコンを主力とする半導体メーカーである。

新会社が発足後、円高、東日本大震災、タイ大洪水、シェア低下などにより恒常的な赤字体質に陥ったが、2013年に産業革新機構からの出資を受け入れるともに、構造改革に取り組んできた結果、車載及び産業用にフォーカスした高収益な半導体メーカーとして再生に成功している。

このため、今後はクルマのエレクトロニクス化や工場のスマート化の追い風を受けて中期的に安定成長が期待できると考え、今回、「大型株1年」での推奨を開始することにした。

目標株価は1,600円

今後1年間の目標株価は2017年12月期の筆者予想ベースでEV/EBITDA倍率15倍の1,600円とする。

目標株価の算出にあたりEV/EBITDAを採用した理由は、同社の場合、インターシル社の買収により多額ののれん及び無形固定資産の償却が2017年12月期から発生するため(インターシルに関連するのれんは2,000億円弱、償却期間は9年間、無形資産は1,500億円弱で償却期間は10年)、同業他社との比較を行う場合、EPSよりものれん代償却等を含んだEBITDAを分母としたバリュエーションの方が適切であると考えたことによる。

なお、15倍を妥当倍率とした理由は、今後同社の評価はADASやエコカーなどの事業機会を背景にこれまで以上の高い評価が付けられていくと期待している。現在のバリュエーションはEV/EBITDAで10-11倍程度であるが、今後は図表1のように同業企業10社のEV/EBITDA倍率(直近年度の実績)の中央値程度の評価はされるとの期待から、EV/EBITDAで15倍を目標株価の目安として採用したことによる。

出所:SPEEDAをもとに筆者作成


ルネサスは自動車用マイコンを主力とする半導体メーカー

同社はNEC、日立、三菱電機の半導体部門を母体としており、マイコン、アナログなどのノン・メモリー半導体を主力としている。

製品別売上構成比(2017年12月期会社予想)は、マイコン(MCU)が約55%、SoC(システム・オン・チップ)が約15%、アナログ・ミックスドシグナルが約20%、パワー・ディスクリート・その他が約10%であり、また、用途別では、自動車関連が約50%、産業用が約30%、幅広い顧客層・エンドマーケット向けの多種多様な用途が含まれるブロードベースドが約20%となっている。

なお、マイコンは、上述の通り全社の約55%を占めるが、自動車向けに限れば約65%、産業用及びブロードベースではそれぞれ約50%となっている。

ルネサスの半導体はクルマの多くの場所で使われ、高いシェアを持つ

同社の中期的な成長を考えるうえで最も重要な市場は自動車用であるが、2016年11月に行われた中期成長戦略に関する会社資料によると、同社の市場占有率(2015年時点)は、パワートレインで約30%、コックピットで約47%、シャシー関連で19%、ボディで30%、電気自動車用のモータ制御(HEV/EV関連)で約40%を確保しており、いずれも1位となっている。

ちなみに、同社によると2016年時点でクルマ1台あたりのルネサスのマイコンの平均搭載個数は11個となっており、年間の出荷個数は約9.4億個に達しているとのことである。

自動車では品質不良が人命にかかわる問題となるため、非常に高い品質管理が求められるが、同社は、先端マイコンの品質不良率を0.1ppm以下(1,000万個のうち1個以下の不良品率)という非常に低い水準に抑え、高い品質管理を実現しており、このことが同社の製品がクルマの中の広範囲な用途で採用され、また高いシェアを確保できていることの一因であると考えられる。

トヨタ、日産に車載用SoC「R-Car」が採用される

足元での車載用売上高の約4分の3はエンジンコントロールなどの車載制御、残りの4分の1がカーナビなどの車載情報機器向けとなっている。

一方、周知の通り、自動車メーカーによる自動運転関連の開発が加速しているため、2020年代になると、ADAS(自動運転技術)関連のSoC(システムオンチップ)の重要性がより高まっていくことが予想されている。

このため、こうしたトレンドに同社が追随できるが大きな注目ポイントとなる。

こうしたなかで、同社は、2017年9月にSoCとMCUが日産の新型リーフの自動駐車機能に採用されたことを発表。

また、10月にはトヨタが2020年に実用化を目指す自動運転車に、車載情報(ADAS用)SoC「R-Car」や車載制御用マイコン「RH850」などの自動運転車向けソリューションが採用されたことも発表している。

さらに、2018年1月に米国ラスベガスで開催されたCES2018では、フォードのリンカーンやGMのキャデラックを用いた自動運転のデモカーも展示している。

もちろん、自動運転関連では、米国のエヌビディアやインテルも積極的に取り組んでいるため競争は今後、激化していくことが考えられるが、こうした最近の発表を勘案すると、中長期的には、同社も自動運転関連の市場拡大の恩恵を受けられることに期待を持つことができるだろう。

産業用でも高いシェアを確保

車載に次いで同社が注力しているのが産業である。FA機器用MCU、SoC、MPU、電力メータ用MCU、ネットワークカメラ用イメージプロセッサーなどであり、すでに比較的高いシェアを確保している。

人手不足や賃金上昇を背景に中国を中心にFA関連の需要が今後も継続する可能性が高く、産業用も車載に続き同社の成長ドライバーとなることが見込まれる。

米インターシルを買収しアナログ半導体を強化

車載・産業用に注力する成長戦略をサポートする取り組みとして、2017年2月に約32億ドルでアナログ半導体を主力とするインターシル社を買収したことにも注目したい。

インターシル社は世界のアナログ半導体市場では5位に位置する中堅企業であり、産業用のウエイトが高い半導体メーカーであるが、この買収により、今後、同社は、インターシル社の電圧制御ICなどのアナログ半導体と組み合わせた組み込みソリューションを提供できることになる。

なお、2018年1月1日付けでインターシルは米国内での統合を完了し、ルネサスエレクトロニクス・アメリカとして運営を既に開始している。

このため、お互いの販路を有効活用することによるクロスセルの促進、商品提案力の強化、重複した経費の削減などによりシナジー効果が早期に発現していくことが期待される。

2017年12月期業績見通し

同社は2月9日に2017年12月期決算を発表予定である。

今年度から決算期を変更したため前年対比の伸び率は開示されていないが、前年の同一期間の業績と比較した会社予想は、売上高が前年同期比+21%、営業利益が同+1%増と、売上高が高い伸びを示す一方で、営業利益がほぼ横ばいが見込まれている。

その理由は、インターシルの買収に伴い、のれんや無形固定資産の償却費が発生することによるが、こうした買収関連の費用を除いた「Non-GAPP」ベースでの営業利益は同+54%増と大幅な増益が見込まれている。また、営業利益率も15.5%と前年度の12.2%から大きく改善する見通しとなっている。

ちなみに、「Non-GAPP」ベースでこのような高い増益が見込まれる理由としては、前年度にあった熊本震災影響が無くなることに加え、車載、産業用の需要が好調であること、インターシル社が新たに連結対象として加わったことなどが挙げられる。

なお、筆者予想については、会社予想はQ4(10-12月期)のR&Dや販売管理費の増加が過大に織り込まれている可能性を考慮し「GAPPベース」(日本会計基準に沿った業績数値、すなわち短信に記載される業績数値)の営業利益は755億円と会社予想の715億円を上回ると予想している。

中期的な業績見通し

2016年9月に発表した「中期成長戦略」では、目指す姿として、1)注力分野の半導体売上の成長率は市場成長率の2倍を目指す、2)売上高総利益率は50%、3)売上高R&D比率は16~18%、4)売上高SG&A比率は12~14%、5)売上高営業利益率は20%以上(対売上高比率はすべてNon-GAPPベース)の5点を挙げている。

また、11月に行われたQ3決算説明会では、今後の業績予想を行うためのポイントとなる以下の3点のコメントがあった。

  • 多額の繰越欠損金があるため、2022年ぐらいまでは税率は大きく変化しない
  • コスト削減やプロダクトミックスの改善は計画通りであり、粗利益率の改善は「テールヘビー」で達成する見通し(後半に上がっていく)を持っている。

こうした点を勘案し、筆者は、営業利益率は2017年12月期予想の10%から2018年12月期は11%、2019年12月期は13%へと改善が続くと予想した。

また、実効税率は2017年12月期Q3累計期間(1-9月)と同じ10%で予想した。

なお、同社は2017年11月29日に、国際会計基準(IFRS)への移行に関して、従来は2017年12月期の有価証券報告書からとしていたものを、2018年12月期の有価証券からに変更することを発表しているが、現時点の筆者の業績予想はすべて日本基準で行っている。

IFRSベースでの予想については、今後、会社側から開示されるガイダンス等を踏まえて改めて行っていく予定である。

バランスシート、キャッシュフロー、配当に関して

インターシル社を買収したことに伴い、2017年9月末の自己資本比率は46.7%と2016年12月末の51%から4.3%ポイント低下している。ただし、業績拡大に加え低税率の恩恵もあるため、2018年12月期から再び上昇に転じていくと筆者は予想している。

フリーキャッシュフローも買収影響により2017年12月期は赤字となり、バランスシートもネットキャッシュからネットデットの状態に2017年12月期は陥ると予想する。

ただし、同社のビジネスモデルは、多額の設備投資が必要とされる先端プロセスについてはTSMCなどのファンダリー(半導体の前工程の製造受託企業)を活用するファブライト型であるため、今後、新たな大型買収がなかれば、フリーキャッシュフローは持続的に黒字を創出可能とみられるため、2018年12月期末には再びネットキャッシュの状態に戻ると筆者は予想している。

配当については、2017年12月期は無配とすることを2017年11月に発表している。また、会社側では内部留保について「急激な環境変化に対応しグローバル競争に勝ち残るための戦略的な投資機会に充て、企業価値の向上による株主利益の最大化を目指す」としており、配当よりも投資や買収を優先することを示唆している。

このため、当面は無配が継続される可能性が高いと筆者は予想した。

同社固有のリスク

今後の同社固有のリスクとしては、以下の3点が挙げられる。

第1は円高影響である。同社の為替感応度(営業利益)は1円の円高で、ドルが16億円、ユーロが▲5億円と比較的大きいため、急激な円高の進展による業績への悪影響には注意が必要である。

第2は、地震等の自然災害の影響である。東日本大震災の教訓を踏まえ、同社の事業継続計画(BCP:Business continuity planning)には相当の進展が見られるものの、同社の主要工場がある茨城県や熊本県での自然災害の影響には今後も注意が必要である。

第3は、現時点で50%の同社株式を保有する産業革新機構による株式の売却による需給悪化である。産業革新機構は2017年6月に19%を売却しているが、追加売出しを行う可能性については(現時点では何も言及されてはいないものの)、今後も注視していく必要がある。

業績ハイライト

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