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【海外成長】シスメックス(6869)の株価はいくらまで上がるのか。そのきっかけは何か(2018年06月18日推奨終了)

投資スタンス

バリュエーションをにらみながらじっくり仕込んでいきたい銘柄。短期的には2019年3月期の会社による業績予想がポイントとなると思われるが、その中で成長性に関してアップサイドが見え、また会社による株主還元施策に改善が見えればバリュエーションの切り上げもあろう。

投資家に伝えたい3つのポイント

  • グローバルで活躍するヘルスケア関連銘柄を新規推奨。
  • 「長期投資」で目標株価を10,300円。
  • 良い銘柄の株価評価(バリュエーション)は上昇し続けることが多い。

はじめに-なぜ注目するのか

最近の新規推奨では毎回同じイントロになって恐縮だが、株式相場の先行きが見えなくなると投資家はどうしても「安定」した銘柄に集中する。

そうした状況をみて、「ああ、またみんな同じ銘柄に集中している。そういう銘柄は避けよう」とスマートな顔をする投資家も多い。確かに、株式相場ではみんなと違う方向に行けという格言も目にする。

その一方で、良い銘柄の株価評価(バリュエーション)は上昇し続けることが多い。同社はそんな銘柄の一つだ。

目標株価と株価評価

今回、シスメックスを新規推奨するにあたって、同社の目標株価を10,300円とする。

これは、株式市場が2019年3月期(つまり来期)にPBRで8倍を許容するという前提だ。

では、なぜPBRかというと、図表1を見て欲しい。

ざっと見ていただくとわかるように、ROEが上昇するにつれ、PBRも上昇している。いや、PBRが上昇するにつれROEが上がっているともいえる。また、それぞれが下落するときも同じだ。

出所:SPEEDAをもとにLongine編集部作成


そのからくりは以下の通りだ。

PBRとROE、そしてPERは以下の様な関係となっている。

PBR(株価/一株当たりの株主資本)=ROE(一株当たり当期純利益/一株当たり株主資本)×PER(株価/一株当たり当期純利益)

この数式を見てお気づきだと思うが、バリュエーションに関係するPERやPBRはそれぞれ切っても切り離せない関係だということだ。

また、その関係式に中にROEという要素が入ってくる。これがポイントだ。

株価というのは実に厄介なもので、その場の株式相場の「空気」などの読みにくい要素が多分に入ってくる。これは企業経営者だけではなく、投資家でもどうしようもないことだ。PERやPBRはそうした株価が要素に入っていることを改めて確認しておきたい。

では、ROEはどうであろうか。

ROEを構成する要素としては「当期純利益」と「株主資本」だけである。

これはいずれも企業経営者がコントロールすることができる要素だ。企業経営者が利益と株主資本のすべてをコントロールできるとは言わないが、株主資本であれば配当を実施して大きく増えるのを抑えたり、自己株式の買い入れをして消却することもできる。これは株式市場に判断を委ねなければ決まらないPERやPBRとは性質が異なる。

シスメックスの会社説明会資料でも「ROEを20%以上」という目標値を掲げている。これは極めて理にかなっていて、企業経営者がPERやPBRといったバリュエーションに口を出すことは意味をなさないが、自らがコントロールすることができるROEを目標値にすることで結果的にはPBRを左右することができる。

余談だが、機関投資家は経営者を詰める際に、「ROEについてはどう考えているのか」と聞くことが多い。これは、「あなた自身がコントロールできる範囲の数字の可能性を教えてくれ。(会社につける値段は自分で考えるから)」ということである。

先ほどの数式を思い出していただければお分かりのように、株式市場が利益の拡大ペースやそのポテンシャルを織り込んでいくPERが大きく低減する状況だとPBRも上昇しにくい。

つまり、PBRを拡大させるためには、利益成長の可能性を投資家に見続けさせ(つまりPERを高める)、資本効率を高める(つまりROEをあげる)ことでPBRを上げてやる必要がある。

では、PERはどうであろうか。

図表2は、2011年3月期から2017年3月期のPERの高低の水準を示したものだ。ちなみに今期は44倍、来期は41倍の水準だ。

見ていただくとお分かりのように、非常に大きな変動を示す。投資家の収益に対する期待とまた企業の実績はそれほどブレ幅が大きいものだという結論もあるが、PERの拡大をPBR拡大の梃子と考えるのは変化が大きいので前提とするのには得策ではないであろう。

では、目標株価についてであるが、会社はROEで20%以上を目標としている。ということで目標株価を考えるにあたり前提にしてもよいであろう。

2019年3月期にPBRが8倍とすれば、目標株価は10,300円となる。もっともこれは同社の収益拡大のペースへの「期待」が変わらないという前提である。この点は会社の2019年3月期の業績予想が最も重要となってくる。

さて、ツッコミが来る前に自ら指摘をしておく。

「業績ハイライト」を見ていただくとすぐにお分りになるが、業績予想段階では2019年3月期のROEは18%と20%に届いてはないでないか、という指摘もあろう。

これは、現在の配当性向(約30%)を続けた場合のROEである。つまり、この業績予想の水準では、これまでの配当性向続けるとROEは低下し続ける。したがって、増配もしくは自己株式の取得&償却が求められる水準ということである。

いずれにせよ、会社自身が目標としているROEの数値を実現しようとすれば、資本政策について何らかの変化があるということになる。

業績と財務内容

バリュエーションの話が長くなったが、本業の話に戻ろう。

シスメックスの収益の源泉となる事業は何かと聞かれれば、やはり「血球計測検査」ということになる。2017年3月期では同ビジネスの売上高は全体の64%を占めている。

次いで大きいのは「血液凝固検査」であるが、こちらは売上高の16%程度である。

血球計測検査などといわれてもピンとこないかもしれないが、ヘマトロジーといわれ、血液検査ではおなじみの検査だ。シスメックスはそのヘマトロジーにおいてグローバルNo.1のシェアを持っており、グローバルで事業を展開している。

競合企業はというと、ヘマトロジーでは首位がシスメックス、第2位が米国ダナハーと既にグローバルの競争を展開している。

また、血液凝固検査分野では、首位がシスメックスとシーメンスのチーム(シスメックスはシーメンスヘルスケア社と血液凝固関連製品に関するグローバルでの販売・サービス契約を締結済み。対象期間は2020年12月31日まで)、第2位がスペインIL、となっている。こちらもグローバルの競争となっている。

シスメックスは様々な先進的な取り組みもしているが、目先は既に売上高の大きな血液計測検査、血液凝固検査、そして尿検査が主な注目事業となろう。

さて、同社の地域別売上高を見てみよう。

図表4から分かることは、シスメックスは既にグローバル企業ということである。日本国内の売上高は全体の17%に過ぎない(2017年3月期)。

そのほかの地域でいえば、米州で全体の売上高の24%、EMEAで26%、中国で24%となっている。

では、それぞれの地域の売上高がどの程度拡大してきたかを見ていくことにしよう。

図表5は2001年3月期の各地域の売上高を100とした場合に、その後どの程度の売上高になっているかを示したものである。

中国が約30倍、米州とアジア・パシフィックは10倍超、EMEAも5倍を超えている。生活水準の向上とともに医療に対する関心や予算なども増加するのはどの地域も同じであろう。加えて同社固有の競争優位によってた成長したともいえる。

とはいえ、今後の成長に関して懸念がないとは言えない。

図表6は、地域別の売上高の3年で見た年平均成長率(CAGR)の推移を見たものである。

見てお分りの通り、2015年3月期をピークに2017年3月期にかけて大きく落ち込んでいる。

同社のようなグローバル企業であれば為替レートや各地域のマクロ環境や制度などが影響するのは避けられない。

また、市場が成熟すればそれだけ成長率が鈍化するのは仕方がない。

ただし、Longine編集部で注目しているのは米州でのアップサイドポテンシャルだ。先ほど挙げた米国ダナハーなどは時価総額で7兆円近い企業である。まずはダナハーの本拠地である米州でどのように競えるかに注目している。

また、ダナハーがそうであるように検査機器メーカーはM&Aが成長のドライバーでもある。今後、シスメックスが継続的にM&Aなども活用して成長を享受するかどうかも重要なポイントとなろう。

さて、財務内容について確認しておこう。

まず、株主資本は2,094億円と2017年3月期末で総資産に対して75%もあり、盤石といえる。

また、借入も長短期の借入を合計しても15億円程度だ。現金及び現金同等物が579億円あるので、ネットキャッシュといえる状況だ。こちらも懸念点は少ない。

財務体質には問題はないが、将来課題になるとすれば、仮に大型買収などの選択肢を検討した際にどのような資金調達の選択肢があるかということであろう。

配当について

これまでの実績を見ると配当性向は約30%。

今後もこの水準が変わらないとするとROEで20%以上というのは少し厳しいと見ている。仮に同じ配当性向を維持するのであれば、自己株式取得などの他の株主還元施策があろうかとみている。

同社固有のリスク

医療検査機器メーカーであるために、機器の不具合等は経営上リスクとなる可能性がある。

今後の注目点

先ほども振れたが、以下の3つがポイントとなろう。

  • 全地域を含めて売上高成長率を以前の水準に戻せる可能性があるのかどうか
  • 米州をどう攻略するのか。
  • グローバルで成長する際には、M&Aをどのように活用していくのか

業績ハイライト

あわせて読みたい

以下の記事も参考にしていただければと思います。

>>>意外に知られていないが世界で存在感ある日本企業。健康に欠かせない株価好調のシスメックスとは

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